近道をしようと商店街の中を歩いていると、
先の方から、ほのかに甘い香りが漂ってきた。
どこか懐かしく、知っている香りだとわかるそれの正体を確かめたくて
すまし顔で甘い香りを辿った。
あぁ、そうだ、そうだ。これ、これ。
お祭りの時に出ている綿菓子のお店が、
とある商店の前に設置され小さな子供たちの注目的となっていた。
外国でも綿菓子のフワフワなビジュアルは綿を想像させるようで、
コットンキャンディーと呼ばれ親しまれている。
どこで食べても綿菓子は綿菓子なのだけれど、
私は日本の控えめな優しい色合いの綿菓子を見ると安心する。
と言うのも、外国で見る綿菓子の多くはクレヨンで塗られたようなビビッドカラーのものが多い。
もちろん、それはそれでとても可愛くて特別感があり、
手に取りたくなるようなビジュアルなのだけれど、
同時に頭の中に「着色料」の文字が浮かぶ私は、
少々世の中を知り過ぎてしまったのかもしれない。
皆さんもご存じのとおり、綿菓子はお砂糖からできています。
お砂糖にも果糖やショ糖、ブドウ糖といった種類がありまして、
甘さや栄養、体への吸収率が異なります。
綿菓子はショ糖を使ってつくられているのですが、
ショ糖は、2種類の糖がくっついている糖分なので、
体内ではこれを分解してからでないと吸収できないため、
ゆっくり時間をかけて吸収されていく糖分です。
一方、果糖やブドウ糖は、各々1種類の糖のみの糖分なので、
それ以上分解できない状態のため、吸収がとても早いのです。
よく、「疲れた時にはブドウ糖を摂ると直ぐに脳の栄養になる」と聞いたこと、ありませんか?
これは、ブドウ糖の吸収の早さによるものです。
糖の吸収があまりに早すぎると体内で処理できなかった糖類が脂肪酸になり
太りやすくなってしまうけれど、
ゆっくり吸収されるショ糖は脂肪酸になる可能性が少ないため、
綿菓子の持っているお砂糖=太るというイメージよりも
実際には太りにくいお菓子でもあります。
もちろん、適量摂取が前提なのですけれどね。
綿菓子の材料はザラメというお砂糖ですが、
このザラメは100%ショ糖でできています。
お祭りなどで売られている綿菓子はとても大きな袋に入っているので
カロリーを気にして我慢されることもあるのかもしれませんが、
糖の吸収も緩やかですし、一袋60~70キロカロリーほどなのです。
一度に食べられる量を考えると、
イメージしていたカロリーよりも低いと感じられるのではないでしょうか?
ザラメが熱で溶かされて空気中で細い糸状になったものを
お店の方が手際よく巻き取っている様子に夢中なチビッ子たち。
その横を通る私も、ふわっふわの甘い誘惑に後ろ髪をひかれながら
今年のお祭りでは久しぶりに大きな綿菓子を狙ってみようかしらと思ったり、
いい大人があの日本独自の綿菓子パッケージを持ち歩くのはいかがなものだろうかと思ったり、
しばし、脳内が甘い誘惑と大人の葛藤でいっぱいになったある日の午後。