お花を見て、「この花は嫌いだ」と思うお花はないのだけれど、「この花は特に好きだ」と思うお花はいくつかある。
その中の一つに「紫陽花」があるのだけれど、皆さんもご存知の通り、紫陽花は梅雨の花。
最近ではブライダル用などに季節を問わず手に入れることも不可能ではないものの、
梅雨の時期を彩る花としての印象が強いお花です。
ですから私は、今年の梅雨の季節に心残りがないようにたっぷりと紫陽花を堪能したのです。
そのような私の元に先日、知人から連絡が入りました。
秋に咲く紫陽花があるって知ってる?と。
何!?秋に咲く紫陽花ですって!?私の胸の内で好奇心の種がパチッと弾け飛びました。
知人の話によると秋雨の時期に咲くタマアジサイという紫陽花があるのだそう。
一見、ガクアジサイのような花にも見えるのですが、
その花のそばに毛糸を丸めたような起毛感のある大きな蕾があります。
この蕾が徐々に膨らみパックリと割れるのだそう。
丸くて大きな蕾が割れると、その中には小さな粒々がぎっしりと詰まった、つぼみの集団が顔を出します。
この小さな蕾のひとつひとつが更に弾けるように割れ(開花し)、ガクアジサイのような花を咲かせます。
ガクアジサイのようなと申し上げましたけれど、
正確には私が知っている紫陽花とは少し趣が異なっており、
全て開花するとまるで線香花火の火花ような印象の紫陽花になるようです。
そう言えば、季節外れに咲いた花のことを、「帰り花」や「狂い咲きの花」などと言うことがありますね。
帰り花という言葉の方が穏やかで温かみのある言葉の様に感じられるのかもしれないのですが、
実は私、どちらかと言えば、「狂い咲きの花」という表現の方が好みなのです。
執筆の際に帰り花と表現している時は余所行き風を吹かせている。
というのは、ここだけの内緒話でございます。
帰り花、狂い咲きの花と言われる花たちは、
本来の開花の時期に栄養や成長が間に合わずに咲くことができなかった花たち。
それが、随分と遅れて栄養や成長が開花に達し、
これまた季節外れの穏やかな気候が巡ってきた時を逃さずに、ここぞとばかりに開花します。
彼らに人の心があったのなら、
周りの花たちに開花の足並みをそろえることができなかった焦りや不安を抱いて
眠れぬ夜もあったのかもしれません。
それでも、焦らず諦めずに自分の時を待ちパッと花を開いて見せた
そのような彼らの貪欲でがむしゃらにも見える、
しなやかな力強さに、「狂い咲き」という言葉は極上の褒め言葉のように感じてしまうのです。
タマアジサイの季節もそろそろ終わりに近づいているようですので、
紫陽花の帰り花かしら?と思われるようなお花を見かけた際には
線香花火のような秋雨が似合うタマアジサイをご堪能くださいませ。
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