毎年大晦日の午前中に、お正月を迎えるためのお花を生けているのですが、大晦日ギリギリまで奔走している私は、お花を買いに行く時間が惜しい、と思っておりました。
様々なことを余裕を持って済ませていれば、このような事にはならない。
そう分かってはいるものの、夏休み最終日に宿題の帳尻合わせに必死だったあの頃と何ら変わっていないことを笑うしかありません。
ただ、今年はクリスマス用に生けるマゼンタカラーのバラを買いに行ったフラワーショップで偶然にも見つけてしまったのです。
お正月用にアレンジされた粋な苔玉を。
松や南天、葉牡丹など縁起ものを苔玉にするなんて考えたものです。
しかも、年明けに花瓶のお水を毎朝変えるのも少々手間だと感じていたのですが、苔玉スタイルであれば、苔玉が乾きそうになった時にお皿にお水を足すだけのお手軽さ。
早速連れ帰りまして、クリスマス前からお正月の生け花完成でございます。
手軽にお正月飾りのお花を準備したいけれど生花のお手入れがネックだ、と感じられていた方は苔玉スタイルもおすすめです。
お正月飾りと言えば、昨年は、注連縄や鏡餅などがどのような意味を持っているのか、お話させていただいたのですが、今年は羽子板飾りを覗いてみようかと思います。
お正月飾りが売られ始めると縁起物として羽子板や破魔弓なども見かけますね。
破魔弓は破魔矢があるくらいですから意味合いも想像しやすいかと思いますが、羽子板や羽根つきも縁起物であり、遊びを通して行う縁起事(厄祓い)です。
年中厄祓いばかり、というイメージが無いわけではありませんが、日頃から自分の行いを省みて大切に日々を重ねていた古の名残なのかもしれません。
羽子板の羽根の先に硬くて黒い実が付いているのですが、これはムクロジという植物に生る、ふっくらと丸みを帯びた可愛らしい実です。
このムクロジ、漢字で書くと「無患子」と書きます。
古の人々のイマジネーションはこの文字を見て解き放たれたのでしょうね。
子どもが患わ無いと書くことから子どもの健康祈願の意味が込められました。
そして、古の人々は今度は羽根の形からトンボの姿をイマジネーション。
蚊と言うのは昔も様々な病を運ぶ虫とされていましたが、トンボは蚊の天敵なのだそう。
ここから1年の役を払うことができるとされました。
羽子板遊びで羽を打ち返せずに負けてしまうと顔に墨を塗られますよね。
これも、魔を寄せ付けないようにするおまじないなので、
羽子板で負けて墨を塗られることも良き事とされてきました。
羽根つきは、奈良時代に女の子が神事として行っていた「毬杖(ぎっちょう)」という遊びがもとになっているという説をはじめ、複数の説が存在しますが、
江戸時代に入る頃には、厄除け、健康祈願の羽根つき遊びというだけではなく、女の子の健やかな成長を祈って初正月には羽子板を贈る習慣ができました。
この習慣が浸透してから木の板に絵を描いたシンプルなものは玩具として、華やかな装飾を施した「押し絵羽子板」は、魔除け、厄除けとして人々に広がりました。
現代でも、男の子が生まれると破魔弓を、女の子が生まれると押し絵羽子板を贈る習慣や、結納の時に男性側から贈っていただいた結納品を、艶やかな飾り羽子板にリメイクして残すサービスもありますね。
羽子板の艶やかさ、華やかさは周りの人の目を惹くだけでなく、縁起が良い上に、女性のお守り要素も含んでいるため、お箸置きやポチ袋、その他のモチーフとしても人気があります。
機会がありましたら、あなたらしいアイデアと発想で羽子板に触れてみてはいかがでしょうか。
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