偶然通りかかったお宅の前に立派な鬼灯の鉢植えが出してあった。
水をあげてから、そう時間は経っていないのだろう。
青い鬼灯からは水が滴っており、その一角だけがやけに涼やかに見えた。
夏の日差しに映える力強いオレンジ色の鬼灯は、昼間だけではなく夏の夜さえも華やかに艶やかに彩ってくれる夏の風物詩でもある。
子どもの頃、梅雨があけると子供部屋に、鬼灯と何かの蔓植物が活けられた花瓶が登場していた。
日を追うごとに順に色付き、色を深めていく鬼灯。
朝、見た時には緑色だった鬼灯が、学校から戻ると薄っすらとオレンジ色に染まっていた日は、ほんの少しだけ「わぁ」っと感動したことを覚えている。
そして、鬼灯鑑賞にも飽きて存在を忘れかけた頃にハッとするのも毎年のこと。
全ての鬼灯が濃いオレンジ色に衣替えを済ませ、凛とした姿でこちらを見ているのだ。
鬼灯のオレンジ色は、夏の雷除けだと言われることがあるけれど、ハッと息をのむほどに鮮やかな色だもの、雷様もハッとして鳴らすことも落とすことも忘れてしまうのだろう、と、子どもながらに思ったものだ。
雷除け以外では、日本ではお盆に飾る仏花の中に提灯を入れる風習があるけれど、これは、お盆の時季にご先祖様たちがこちらへ帰ってくる道中、鬼灯がその道を照らす提灯になると言われていることからだという。
この話を聞いたときには、「鬼灯型の提灯だなんて何だかおしゃれ。」と、想像して楽しんだ。
そうそう、日本で鬼灯と言えば観賞用というイメージが強いけれど、鬼灯は食すこともできるのだ。
漢方では根や茎、葉を、解熱や咳止め、腹痛や子どもの夜泣き、利尿薬などに用いられるとか。
かたやヨーロッパ(フランスやイタリア)では鬼灯をフルーツとして味わう。
もちろん、私たちがよく目にする鬼灯ではなく、食用の鬼灯なのだけれど、これがとてもポピュラーなのだ。
というのは、鬼灯には体内に脂肪を溜め込まないようにする成分や、コレステロールを下げる成分など美容と健康に嬉しい効果効能が期待できる成分が含まれているからだ。
また、皮を剥くと羽子板の羽のような見た目が可愛らしく、爽やかな酸味がチョコレートとも合うため、チョコレートでコーティングされたものなどがお菓子として売られていたりする。
日本人にとっては鑑賞用の鬼灯ゆえ、初めて口にするときには複雑な気分になるかもしれないけれど、食用は鑑賞用のものとは香りも異なり、「フルーツ」という意識で味わうことができるかと思う。
鬼灯鑑賞も良いけれど、最近では日本でも食用の鬼灯を見かけることがあるため、
食用の鬼灯を見かけましたら召し上がってみてはいかがでしょうか。
そろそろ、夏へ導いてくれる鬼灯の季節がやってくる。
緩やかに、そして確実に変化していく季節を感じるきっかけに「鬼灯」はいかがでしょうか。