電車の中が夏の空気を含んでおりました。
いや、夏の空気というよりは、夏休みの空気と言った方が良いのかもしれません。
こちらはテーマパーク帰りかしら、こちらはプール帰りかしら、
こちらは、これからお祭りに行くのね、といった具合に、
そこら中が夏色に染まっておりました。
電車が駅に到着し、開いたドアからは外の熱気が人と共にもわっと流れ込みます。
そして、人の乗り降りが落ち着くと、電車は再び走り始めました。
私の前には数名の女性グループが立ったのですけれど、戦国ブームだからでしょうか。
観光帰りのように見えた彼女たちの手には
武将の名が記されたガイドブックのようなものが握られておりました。
その中の一人が、ある武将の名を挙げてこう言ったのです。
「この家紋が良かったな。ワタシ、実家の家紋は、あまり好きじゃないんだよね」と。
日本には2千個以上の家紋が確認されています。
まだ、見つけられていない家紋も含めますと、
その数は更に膨れ上がるだろうと言われております。
今は1人にひとつ、苗字と名前がありますが、
全ての人が苗字や名前を持てるわけではない時代もありました。
それでも、一族などを識別できなければ困ることもあったのでしょう。
家紋を持つことは許されており、
人々は、自分を表現する方法のひとつとして家紋を使うようになります。
この家紋、公家と武家とで発祥に違いがありまして、
公家では着物などに描かれていたものを家紋として使用するようになります。
特徴としては、自然界に在るものが多く使われているように感じます。
一方、武家では戦いのときの鎧やのぼりなどのシンボルを
家紋として使用するようになったようです。
このような特徴を覚えておくと、その家紋が公家に由来しているものなのか、
武家に由来しているものなのか、ざっくりではありますが紐解くヒントにすることができます。
他にも褒美としていただいた家紋であったり、
一族の繁栄や安泰を願う意味が込められている家紋であったり、その在り方も多種多様です。
家紋は、後に、おしゃれ目的で着物などに染め入れられるようにもなりますが、
それも時代と共に衰退し、
今では自分の家紋がどのような家紋なのか知らずに過ごす人もおります。
現代では、各種セレモニーの時の衣装や小物類、
盆提灯や墓石などには使用されますが、
その他のシーンでの使用はほとんど見かけませんね。
きっと、難しくて堅苦しく、何だか古臭い。
そのようなイメージを抱かれるのかもしれません。
だけれども、家紋は思うほど堅苦しいものではないのです。
もしも、現在使っている家紋が気に入らないのであれば、
自分で新しくデザインして作り変えても問題はないのです。
もちろん、“ご先祖様たちが大切に受け継いできた家紋”という意識が代々働くため、
賛否両論ありはするのですけれど、法的なルールはないのです。
このようなことを知ってなのか、単に歴史ブームだからなのか、
単純にデザインに魅せられるのか、その辺りは分からないのですが、
近年では、家紋に興味を持つ人も増えてきており、
結婚式の招待状に両家の家紋を使う方も増えております。
さて、皆さんはご自分の家紋をご存知でしょうか。
家紋を知らなくても生きていけるのですが、せっかく持っている自分の家紋。
気になりませんか?
季節柄、ご実家へ帰省する方、ご親戚の方と顔を合わせる方も多いかと思います。
ぜひ一度、ご自分の家紋を尋ねてみてはいかがでしょうか。
意外な歴史上の人物たちと、どこかで繋がっているかもしれません。
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