すれ違いざまに、「最近、何でもフェスだね。」という言葉が耳に届いた。
他人様の会話の一部だったのだけれども、
心の中で「確かに」と頷きながら、横断歩道少し手前で立ち止まり、赤信号を見上げた。
2、3年ほど前だっただろうか。
外国の友人たちとSNSでやり取りをしていた時のこと、
日本での旅行を終えて帰国した1人が、
「日本人が言っているフェスは、フェスティバルなのか、カーニバルなのか、
どちらの意味合いが強いの?」という素朴な質問を投げかけてきた。
内心、面倒な質問をするな……。と思いつつも、
母国語が異国の地で少々違和感のあるニュアンスで使われていると
このように素朴な疑問を抱くのは当然のことで、
何も彼らに限ったことではないのだろうと思い直し、ゆっくりと言葉を選びながら、
いや、正確には自分の拙い語学力を駆使しながら説明することにした。
今回は、私たちの日常で多用されるようになった「フェス」という言葉の世界を
ちらり覗き見してみたいと思います。
何となくイメージとして理解しているかも、という方は、
この機会にサクッと知識ボックスの整理をしてみませんか。
ご興味ありましたら、柊希にお付き合いくださいませ。
私たちが使っている「フェス」という言葉は、和製英語です。
もとは、祭礼、祭典、祝祭や祝祭日、催事を意味する英語の「フェスフェスティバル」で、
「フェスタ」はイタリア語で同じ意味合いを持ち、
「フェスト」はドイツ語では同じ意味合いを持っています。
先日触れたオクトーバーフェストはドイツ発祥のイベントでしたので、
「フェスト」という言葉が使われています。
フェスティバルの言葉を少し深く覗いて見ると、
どこの国のお祭りなのか分かったりするのです。
そして、日本で使われるようになった「フェス」という言葉。
どの国の言葉にも通じるような短縮センスだと、私は個人的に思っていたのですが、
やはり生まれ育った国が異なれば感性の土台も様々なようで、
耳慣れていなければちょっとした説明が必要になることもあるようです。
そして、お祭りを意味する言葉には「カーニバル」もありますが、
「カーニバル」と「フェスティバル」には正しい使い分けがあります。
カーニバルは、参加して楽しむお祭りを意味しています。
例えば、これからの季節であれば、
秋祭りの御神輿や、ハロウィンの仮装行列などがこれに当てはまります。
参加型のイベントが全てカーニバルかと言うと、そうではなく、
これは謝肉祭(しゃにくさい)とも言い、
そのイベントの発端に神事な意味合いが含まれているものを指しています。
現在は、単純に皆で楽しむことを目的にした
参加型のイベントをカーニバルと呼ぶこともありますが、
この辺りを知っておくと、主催者側の意図や想いに触れることもできるかと思います。
一方、フェスティバルは見て楽しむお祭りを意味しています。
中にはミュージックフェスなど、一見、参加型のイベントに感じますが、
これらは神事との関係がないお祭りですのでフェスティバル(フェス)を使っているという訳です。
フェスティバル、フェスタ、フェスト、フェス、カーニバル……。
楽し気な言葉に触れた際には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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