幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

一部分だけを選り好みすることは出来ないようになっている。

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持ち物の中にある、開かずの箱。

私の家移りの回数が多すぎて、開けるタイミングを逃している箱だ。

この箱の中身に助けを求めなくても過ごすことができている現実から想像するに、

梱包時には私にとって大切な色々を詰め込んだのだろうけれど、

きっともう、そのほとんどが、今の私には不要なものなのではないかと思う。

そろそろ本気でどうにかしなくてはと思い立ち、

夏の終わり頃から、ひと足早い年末の大掃除と断捨離を兼ねつつ

一番古いであろう箱から順に開封しはじめた。

想像していた通り、箱の中のものをゴミ袋へと移す作業が淡々と続いていたのだけれど、

時折、ズボラな私でも成長しているのだと思える自信の欠片を見つけ、

開かずの箱の役割は、自分の成長を感じることだったのかもしれないと思ったりもした。

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いくつ目かの箱の中身が底をつきかけた頃、

フランス語を勉強していた時に使っていた手のひらサイズの小さなノートを見つけた。

パラパラと捲ると、ネイビーのボールペン文字が並ぶ中、

ショッキングピンク色のクレヨンで「鉄を鍛えていればこそ、鍛冶屋になれる!!!」と

フランス語で書かれていた。

これ、フランスの「ことわざ」で、私のフランス語の恩師が書き記したものだ。

意味は、鍛冶屋になりたいのなら、知識を詰め込むよりも、

鉄を打ちながら技術を覚えていけばいい。というもので、

何ごとも、チャレンジを重ねていく中で感覚を掴み、

それを自分のものにしていくことを良しとしている「ことわざ」だ。

当時の私は、目の前にいるフランス人に対して失礼がないように、

出来るだけ正しいフランス語を使おう、覚えようと、

頻繁に辞典を捲って確認していたように思う。

相手は始めから完璧なんて求めていないのに、必死だったのだろう。

だから彼女は私に、生きたフランス語に触れることの大切さや楽しさを

この「ことわざ」で伝えたかったのかもしれない。

 

失敗は悪いものでも、怖いものでもないけれど、

日本人にとっては少々ネガティブなイメージを抱きやすい側面を持っているように思う。

日本人にも、実践の中から学ぶことの大切さを重視する部分があるにも関わらず、

見切り発車をせず、できるだけ失敗をしないよう、

基本や準備を大切にして、モノゴトを慎重に進めることを良しとする傾向もある。

きっと、これは日本人の国民性と呼べるもののひとつなのだろう。

失敗はチャレンジしなくては得られない経験でチャレンジした証だとも言える。

成功も然り。

失敗したくなければチャレンジしなければいいだけのことなのだけれども、

チャレンジしないという選択は、

同時に成功も、それに付随する経験や気持ちも手にしないという選択でもある。

それでは、何だか、自分の日々をとても勿体なく感じてしまう。

モノゴトや感情にも様々な側面があり、

面白いことに、一部分だけを選り好みすることは出来ないようになっている。

 

どちらも正しくて、どちらも大切なことで要はバランスなのだけれど、

「ことわざ」ひとつとってみても、

お国柄や国民性のようなものが表れているものだなと

ショッキングピンク色のクレヨンで書かれた「それ」に久しぶりに触れて感じた。

そして、多くのことを感じさせてくれたことに感謝しつつ、

手のひらサイズの小さなノートをそっと袋の中へ移動させた。

次の箱には何が入っているのやら。

私の、ひと足早い年末の大掃除と断捨離は、もうしばらく続きそうだ。

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