曜日感覚が乏しい私は、人の往来多さで祝祭日に気付くことが多い。
その日も家族連れを多く見かけるような気がして、
バッグの中からスマートフォンを取り出すと、カレンダーが日曜日を示していた。
すれ違う人たちが向かう先を目で追う途中でフリーマーケットの貼り紙を見つけ、
彼らの目的地がそこだと確信した。
ネットを介して行うやり取りのサービスやシステムも充実しているようだけれど、
対面式には対面式の良さがあり、イベント感も手伝ってということなのか、
多くの人が集まっているように見えた。
私は自分の目的地を目指して歩いていたのだけれど、
ふと、フリーマーケット絡み出来事を思い出した。
英国の人たちは、物をとても大切にする。
もちろん、便利なものや使い捨てのようなものも使うし、そのような暮らしを否定することもない。
私の目には、彼らが、手入れをしながら使うことや、受け継いで使うことを楽しんでいるように映った。
そのような文化や風習、国民性の国だったからなのか、
英国では週末になると至る所でフリーマーケットが開催されていた。
欲しい物や長年探し求めている物があるわけではなかったけれど、
時代を経てきたものを見て、知る楽しさもあり、私も友人たちとふらり立ち寄ることがあった。
確か、フリーマーケットへ行く約束を交わした時だったと思うけれど、
私が手帳を開きfree marketと記したのを見た友人たちが一斉に間違っている!と笑った。
“自由free”と“市場market”のどこが間違い?と思っていると、
“free”ではなく“flea”だというのです。
英語の“flea”は、虫の蚤(ノミ)、くだらないもの、といった意味があることから、
もともとは、古着や時代遅れのくだらないものを売り買いするマーケット、
蚤(ノミ)がついていてもおかしくないような年代物や中古品を売り買いするマーケット、
という意味でフリーマーケット(flea market)と呼ばれるようになった。
この風習が日本語に伝わったときは正確に訳され、蚤の市と呼ばれるようになったよう。
これが、時代が移り変わる中で蚤の市という言葉が薄れ、
マーケット自体も大きくなり、イベント化され、
古いものだけでなく新品のものや未使用品まで自由にやり取りされるようになり、
本来のフリーマーケットと呼ばれるようになった。
そして、私のようにfree marketが誤表記であると疑わず使っている方々もいるようだ。
もし、現在の日本のフリーマーケットの自由なやり取りをそのように呼んでいるのだとしたら、
和製英語に分類されることになる。
ちなみに、フリーマーケット(free market)という単語は別途存在している。
こちらは経済用語の自由市場のことで、
私が思っていたものとは別物だと知ったのも、この時だった。
知らぬ所で、少々ややこしいことになっているネーミング。
フリーマーケットに触れる機会がありました際には、
チラリ思い出していただけましたら幸いです。