ふらり立ち寄ったショップで手触りの良さそうなニットに目が留まった。
ここ最近、冷え込んでいたからだろう。
そのふんわり感に心を鷲づかみにされたような気がした。
そのような私の心内を知ってか知らでか、
スタッフの方が絶妙なタイミングで手際よくそのニットを広げ、手に取ることをすすめて下さった。
なめらかな艶と光沢、その見た目を裏切らない感触に、
これが自宅だったなら頬ずりしていたことだろう、そう思った。
商品を棚へ戻していると、今度は別のニットを手にスタッフが近づいてきた。
今日は購入する予定もないから申し訳ないなと思っていると、
「こちらは、先ほどのニットよりもボリューミーでおすすめですよ」と。
この和製英語も、ファッション界をはじめ、ヘアメイク、食の世界と、
いくつもの世界をまたにかけ、いつの間にか世の中に定着しつつあるな、と思いながら、
差し出されたニットに触れた。
ただ、これは私の個人的な感覚で好みの問題なのだけれど、
とても素敵な、大人の女性の口からはあまり聞きたくないような気がする言葉でもある。
そのことに気づかされたのは、あるアクセサリーショップで、
とても素敵な、大人の女性スタッフの接客を受けたときのこと。
その女性は年齢不詳だったけれど頭の先から足の先まで、
しなやかな気品と色香、そして、柔らかさを感じるような余裕とカッコよさをまとっていた。
その女性が、ボリュームがあるアクセサリーを私に見せながら、
ボリューミナスという言葉を使ったのだ。
ボリューミナスは、ボリュームがあることを表す正しい形容詞なのだけれど、
私には、ただの形容詞ではなく、素敵な響きとして印象付けられた瞬間だった。
素敵な女性は、色々なところに居るものだな、と思ったりもして。
同じ「赤」でも、その時々の年齢の自分に合う「赤」を手に取るように、
その時々の自分を楽しむことができるお洋服に着替えるように、
言葉を着替えて楽しんでみるのも、悪くないのではないだろうか。
そのようなことを思いながら、ショップを後にした。