冬の間にお世話になった衣類や小物類などに、シーズン中よりも念入りにお手入れを施しながら進めている衣替え。
手に取っただけで「暑い」と感じる皮膚感覚を通して、自分の体が、自分で思っていたよりもずっと早くに新しい季節に馴染み始めていたこと知る。
一度に済ませてしまいたい気もするのだけれど、誰に迷惑をかけるわけでもなく、
済ませなければ春を楽しむことができないというわけでもないのだから、と思い直し、
今年の私は焦らず、のんびり、丁寧に。そのような気持ちで進めることにした。
何かに追われているような気持ちになることもあるのだけれど、結局、そのような感覚を作っているのも、感じているのも自分だ。
そのようなことを思いながら、衣替えには全く関係がない、夏用の扇子のお手入れを始めた。
団扇の原型は、古の中国で使用されていた物で、もとは身分の高い人が自分の顔を隠すための道具として使われていたという。
一方扇子は、平安時代初期に日本で作られたといわれている。
この扇子は、後に中国へ輸出され、更に世界各地へと広がり、ヨーロッパでは、絹張りのものや、
骨と呼ばれる絹が張られていない部分に宝石を散りばめた艶やかなものが女性たちの心を掴んでいたのだそう。
興味深い点は、日本の平安時代の人々だけでなく、ヨーロッパの女性たちも男性に想いを伝える際に扇子を使っていたということ。
分化も習慣も異なっていたはずなのに、古より扇子は、女性の想いを届ける手助けをしてきたということだ。
日本では扇子を縁起物として、お祝いの贈り物にすることがあるけれど、このような歴史を知ると贈る方も、贈られる方も、一段と愛着がわくのではないだろうか。
暖かくなると、電車内や駅のホームで扇子で扇いでいる方を見かけることがあるのだけれど、扇子は、男性と女性では握り方、持ち方が異なることをご存知だろうか。
女性は、手の甲と親指以外の4本の指を外側へ向けて、親指と4本の指との間に扇子の骨部分を挟むようにして持ち、扇ぐのがお作法。
一方、男性は、扇子の「要」と呼ばれる、骨が全て集まり、まとめられている部分を握り、親指を外側へ向けて、4本の指は内側へ向けた状態で扇ぐのだ。
扇子を持つ際、男性持ちのように扇子の要の部分を握った方が安定感が出るため、
男性持ちで扇いでいる女性を目にする機会が多いように思います。
女性の皆さん、扇子を使う機会がありましたら、今年は“扇子のお作法”を、そっと楽しんでみてはいかがでしょうか。
私は今年、扇子を使う機会が何回あるのだろうか。
そう思いながら、お気に入りの蝶が舞っている扇子を眺めた。
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