少し前に大量に処分したはずなのに、あっという間に溜まってしまった保冷剤。
保冷剤が、スペースを必要以上に占領し始める前にもう一度、と冷凍庫を覗き込んだ。
B5サイズをひと回り小さくしたくらいのそれを3つ取り出し、外のガーデンテーブルの上に並べた。
この暑さだ。ものの15分ほどで溶けてしまうに違いない。
溶けたら中身を取り出して、久しぶりに消臭剤にでもしてしまおうかと目論みつつ書斎にこもること数時間。
空いたグラス片手に、リビング外にあるガーデンテーブルへ視線を送ると、生まれて初めての光景が広がっていた。
カチカチに凍っていた保冷剤は、程よい柔らかさにまで溶け、歪な形をしていたはずの部分は、なだらかに整っていた。
そして、その整えられた保冷剤の上で、スズメが羽を広げ涼をとっていたのだ。
この時季、猫や犬が涼しい場所で開き状態で涼んでいることがあるけれど、そのスズメバージョンと言ったところ。
しかも、1つの保冷剤の上に1羽乗っており、計3羽も。
その様子はまるで、ウォーターベッドを試す人のようにも見え、このスズメたちは大丈夫だろうかと様々な心配が脳裏を過った。
スズメがベランダに来るようになると、植物や洗濯ものを荒らされたり、フンによる被害がエスカレートし困っているという話を見聞きすることがある。
中には、防御ネットを張ったり、スズメが嫌がる匂いアイテムを設置するなどの対策を施している方もいらっしゃると聞く。
私も、そのような状態になることを懸念したこともあったのだけれど、
今のところ、困るようなことは何も起きていないし、餌付けしているわけでもなく、
一時的に空間の一部を譲り合っているだけだからいいかしらと、成り行きに任せているところだ。
しかし、先日話題にした自然界で生きるもの達との関わり方を思うと、
人とスズメとの距離が近すぎるのも、いかがなものか。
敢えて“追い払う”ということをすべきか否か。と思うこともある。
正直、このような時の対応の正解には辿り付けていないのだけれど、
このようなことを思うこと自体、そして目の前にある状況そのものが、
自然界と人間界がボーダレスになってきている印でもあるように思えた。
スズメは砂浴びをするが、水浴びもする野鳥だと聞く。
水浴びをする理由は、羽毛のコンディションを整える目的以外に、体を適温に冷やす目的もあるそうだ。
街中の水たまりは、ぬるま湯のような温度だろうから、水浴びどころではないのだろう。
あまりにも気持ちよさそうに、溶けきった保冷剤の上で脱力しきっている姿を目にしたものだから、
私には彼らを追い払うことが出来ず、見て見ぬふりをして、飲み物のおかわりを手に書斎へと戻った。
「今年の夏は、人にとっても、動物にとっても、厳しい夏だ」と言える光景を目にした、ある日のひとこまだ。
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