久しぶりに夜空を見上げた。
満月の夜でもないのだけれど、街灯りに照らされていることが当たり前になった街中では、瞬く星を見つけることが難しい。
ぐっと押し迫られるような、夜空から落ちてくるような、そのような気分で最後に星を観たのはいつだったか。
あれは、時間を持て余していた学生の頃だろうか。
もう記憶も曖昧になりつつあるけれど、「あちらの方角にたくさん星が出ているように見えるから」と、
それだけの理由で、温かい飲み物やお菓子を買い込んで、ただただ車を走らせ、
知らない場所に腰を下ろして見上げたあの日が最後だったように思う。
日常の中の延長線上にある非日常を前にテンションが上がり、みんな口数が増えたけれど、
きらきら、ちらちらと瞬く星を前にしたら言葉を失い、不自然なほど静まり返った。
しかし、そのような時でもマイペースな子が1人くらいはいるもので、
おにぎりだったか、唐揚げだったか、何か食べ物の封を開けた匂いで全員が我に返る、ということがあった。
星空と唐揚げ。
今思い返してみると、そのミスマッチが、妙に懐かしく感じられた。
そう言えば、「星がちらつくと雨」ということわざがある。
そもそも星は、宇宙空間ではキラキラ、ちらちらと輝いたりしておらず、
ただただそこに在り、一定量の光を放っているだけで、
私たちが地上から空を見上げたときのように、瞬いて見えたりはしないのだそう。
私たちの目に、星が瞬いて映るのは、私たちの目と星との間を、
ホコリやゴミが空気に乗って揺れたり、流れたりするからだと言われている。
このときに、ホコリやゴミが障害物となって光の向きが変えられ、キラキラ、ちらちらと見えるのだ。
ということは、大気が不安定になっているときほど、低気圧や前線が近づいており、
上空の風が強いときほど、ホコリやゴミが揺れたり流れたりすることから、
星が瞬いた翌日は、曇り、雨、風が強い日になる可能性が高い、と空から推測できるのだそう。
この、夜空の変化に気付いた先人たちが残した、天気を読むことわざが「星がちらつくと雨」だ。
星の瞬きを感じられる空ではなくなりつつある昨今、
もしかしたら、こうして少しずつ、人の感覚は鈍くなっていくのかもしれない。
見上げた夜空で星がいつになく瞬いていたら、翌日のお天気に注目してみてはいかがでしょうか。
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