太陽が静かに沈み始め、辺りが淡い桃色に包まれ始めた。
この時季に見ることができる淡い桃色の夕焼け空が好きだ。
10分、いや、5分ほどで消えてしまう淡い空色だけれども、
ただただ好きだという気持ちだけで胸の奥が満たされていく感覚を、とても贅沢なものだと感じる時間でもある。
その淡い桃色に包まれながら普段とは異なる道を選んで歩いていると、
前方から大型犬を連れた方がやってきた。
しっかりと躾られている大型犬は、私が通り過ぎるまで道の端にお行儀よく座っていた。
飼い主の手にはフンを拾うための道具が入ったバッグが握られていた。
この光景を見ると英国のある光景を思い出すことがある。
英国でも、犬のフンは飼い主が拾うことになっているため、
誤って犬のフンを踏んでしまうようなことはないのだけけれど、馬のフンには注意が必要なのだ。
英国では、一般の方が馬に乗って移動していることもあるし、警官が馬に乗ってパトロールをしていることもあるのだけれど、馬のフンを拾う人は居ないに等しい。
だから、道路や公園だけでなく、馬を飼っていないお宅の前などにまで放置されており、迷惑な思いをすることが多々あった。
馬がフンを落とした場所を車が通り、バスが通り、広がっている上を人々が歩くのだ。
靴を脱がないスタイルのお宅にお邪魔するときなどは、
この床は、この絨毯は、本当に大丈夫かしら?と落ち着かないこともあった。
百歩譲ってアスファルトではない地面に落とされたフンであれば、いずれは自然に還るだろうけれど、アスファルトの上では還りようがない。
それが当たり前の光景なのだと知った時には、「この国、馬のフンこそ、どうにかしなくてはいけないのでは?」
「このままで本当に良いと思っているの?」などと思ったけれど、それが、その国の日常だった。
中には、法律があろうが無かろうが飼い主のモラルの問題だと問題視する方もいらっしゃったけれど、それは少数派だったように思う。
もう随分と前のニュースだけれど、某ファストフード店のドライブスルーを馬で利用しようとした珍事件が話題になっていた。
その時の、飼い主と店側のやり取りが非常に滑稽だった記憶があるのだけれど、こちらもフン絡みのニュースだった。
きっと、今でも警官が馬でパトロールをすることがある国のことだから、
私が知らない歴史や分からない感覚があるのかもしれないのだけれど、
この問題、いつかはキレイさっぱり解決するのか、少し興味がある。
今となっては懐かしい英国の景色を思い出しつつ、
飼い主さんが拾い損ねたのであろう、犬の小さなフンを見つけ、それを妙に微笑ましいと思った日。
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