必要に迫られて、ディズニー映画の『101匹わんちゃん』を観た。
随分と久しぶりだったこともあり、途中、こんなストーリーだったかしら?などと思ったりもしながら鑑賞した。
外国人の知人宅には、映画に登場したダルメシアンよりも大きな、2頭の大型犬がいた。
各々、自分が気に入っているソファーに座っているのだけれど、
お客さんが来ると自分のソファーカバーを咥えて、その席をお客さんに譲るのだ。
その賢い2頭を時々、私が散歩に連れていくことがあったのだけれども、「WALK(散歩)」という単語を口にすると、
彼らのテンションが上がりすぎて家の中を本気で駆け回ってしまうため、
人間同士の会話の中では一文字ずつばらし、「W、A、L、K」とスペルを読み上げることが約束ごとだった。
そして、玄関先で1度だけ「WALK」と彼らに伝えるのだ。
これは、日本語では使うことができない技だと関心したことを覚えている。
単語と言えば、犬を数えるときに、1匹、2匹と数えるのか、1頭、2頭と数えるのか、私は迷うごとがあった。
どちらも正しいのだろうけれど、正しいと言い切れない気持ちが、靄のように広がっていた。
今回のお話コードは、「数え方」でございます。
私のように薄っすらとした靄をお持ちの方は、この機会にすっきりとさせてみませんか。
お時間ありましたら、少しばかり柊希にお付き合いくださいませ。
「匹」と「頭」の使い分けを覘く際には、語源を辿るのですが、
1匹、2匹と数える際に使う「匹」の語源は、「馬」だと言われております。
古の日本人は、馬の労働力にとても助けられており、馬は生活に欠かせない家畜でした。
常に行動を共にしているため、人は馬の大きなお尻を見る機会も多かったわけです。
その左右のお尻を眺めているうちに、
対になっていることを表す「匹」という文字を連想したのでしょうね。
更に、馬に付けている綱を「引く」という言葉の響きに連想が飛び、
馬だけではなく、幅広い生き物を数えるのに「匹」が用いられるようになったのだそう。
ですから、当時は犬も当然のごとく、1匹、2匹と数えられておりました。
では、どうして1頭、2頭という数え方が存在しているのか。
こちらの語源は、読んで字のごとく体の部位である「頭」であり、しかも英語の「head」なのだそう。
英単語ということからも察することができるのですが、
こちらは「匹」の歴史と比べますと、
使われ始めが、明治時代も終わりに差し掛かった頃だと言いますから、わりと、新しい表現です。
西洋では、家畜の牛を数える際に、この「head」を使っていたそうで、
これを日本人が、そのまま直訳して「頭」という数え方が登場しました。
そして、西洋に倣って牛などの大きな家畜を「頭」で数えるようになり、
それならば、他の大きな動物も「頭」で数えた方が良いのでは?という声のもと、
1頭、2頭という数え方が広がったようです。
しかし、この「大きな」という基準はとても曖昧なもので、
やはり、犬の数え方はどちら?と迷ってしまいます。
そのような時には、人間が両腕で抱きかかえられるかどうかで判断するのだそう。
抱きかかえることができれば、対象が小さいので「匹」と数え、
抱きかかえることができなければ、対象が大きいと判断し、「頭」と数えるというのです。
そして、もうひとつの判断基準には、対象が人間にとって役に立つか否かというものもあります。
例えば、特殊な訓練を受けている警察犬や盲導犬。
更に、様々な意見がありますが、人間のために使われているマウスや、
過去に日本人の生活を支えた蚕などは、その大きさに関わらず1頭、2頭と数えるというルールがあります。
私は、過去に柴犬を飼っていたのですが、中型犬でした。
なかなかの骨太犬ではありましたが、抱きかかえることもできましたので、
この基準から考えると「匹」が適切だったのかもしれません。
ただ、もうひとつの判断基準を当てはめる際、
警察犬のような特殊任務は持っておりませんでしたけれど、
愛犬は家族の一員であり、居てくれるだけで幸せな気持ちにしてくれていたことを思うと、「頭」だ、と思ったりしております。
「匹」も「頭」も使うことはできるのですが、迷ったときには、その対象が小さいのか、大きいのか。
人間によって与えられた特殊任務を遂行しているのか、否か。
この辺りで、判断するとよいかと思います。
何かを数えるとき、その対象によって数え方を細やかに変える日本語はとても奥深く、
と同時に、その対象を丁寧に見て、関わってきた表れでもあるように思います。
今回は犬を例に挙げておりますが、様々な対象を数える際に使うことができる見分け方ですので、
あなたの知識ボックスの片隅に、そっと忍ばせておいていただけますと幸いです。
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