少し涼しくなってきたこともあり、久しぶりに花屋に足を踏み入れた。
店内を見回っていると、お店の奥に大量のコットンが、ステンレス製のガーデニングバケツに生けてあった。
バケツには売約済の札が貼られていたのだけれど、
弾けた実から飛び出した、ふわふわのコットンにつられ、こっそりと指先でそれに触れた。
生コットン、という言葉が正しいのか分からないけれど、
出来立てふわっふわの生コットンが持つ癒し力に、ノックアウトされた気がした。
私たちの生活に欠かせない素材であるにも関わらず、
どのような花が咲くのか、どのようにして綿糸ができるのか知らないと人は意外と多い。
私も花や木に触れる機会が無かったら、知らぬままだったに違いない。
コットン(綿、綿花と呼ぶことも)は、ハイビスカスと同じアオイ科の植物で、
8月下旬から9月にかけて、淡い黄色をした柔らかい印象の花を咲かせる。
この花びらはハイビスカスの花びらにも似ているのだけれど、
異なっているのは、渦を巻くような状態で花びらを開くところだ。
とてもきれいな花なのだけれど、コットンの花は1日もたない花で、夕方にはすぐに萎んでしまうため、私は実物をまだ一度も目にしたことがない。
聞くところによれば、萎む直前の僅かな時間だけ、花びらを淡い桃色に染めるという。
それはまるで、初秋の訪れを、そっと伝えてくれているようでもある。
コットンは、素敵な花が萎み散った後には、ぷっくりとした果実を実らせる。
そして最後は、この実がポップコーンのように弾け、中から出来立てふわっふわの生コットンが現れるのだ。
人の手が加えられる前にコットンとして出来上がっていることを思うと、魔法のようだといつも思う。
この、実が弾けて現れたコットンのことをコットンボールと言い、
この状態のまま鑑賞用として楽しんだり、
手を加えてドライフラワーにしたものが、秋から冬辺りになると花材として出回り、
クリスマスリースや秋冬の装飾として利用されている。
コットンは、古に日本に漂流したインド人が持っていたコットンの種が始まりなのだそう。
コットンが伝わり、栽培が安定するまでの日本人と言えば、
貴族たちは絹、庶民は麻の着物を着ていたのだけれど、
江戸時代辺りからは、コットン、綿の着物が主流となったという。
私は肌が弱いため、コットンの優しい肌触りに助けられることも多いため、
密かに、種を持っていてくれたインド人と、当時栽培することに成功した先人に感謝していたりする。
コットン(綿、綿花とも)は、初秋の訪れを告げる花でございます。
身近な素材でもありますので、
この機会にコットンのことを知識ボックスの片隅に忍ばせていただけましたら幸いです。
画像をお借りしています。:https://jp.pinterest.com/