冷凍庫に忍ばせていたはずのパイ生地が見当たらない。
何処へ消えてしまったのだろうかと隅々まで見渡してみたけれど、やはり無い。
当然、私が使い切ってしまったのだけれども、脳内にある記憶は書き換えられておらず、
パイ生地があるという前提で作ってしまったフィリングから、「残念」という声が聞こえそうな気がした。
パイ生地を使い切ろうと思ってキッチンに立ったはずなのだけれども、
まさか、パイ生地を買いに行かなくていけない事態に陥ってしまうとは。
時々、自分の瞬発力と見切り発車が思わぬ方向へ向くことがあるけれど、それはそれで悪くない。
そのように思っているから、このような事態を招くのだろうなと思いながら、靴を履き、家を出た。
冷凍のそれを手に取ったついでに、視線を流すと、冷凍野菜の種類の多さに驚いた。
世代によっては、冷凍野菜は栄養が減ったものだと思っており、
市販の冷凍野菜、自家製の冷凍野菜を問わず、あまり良い印象を抱いていない方が多いのだと、食育に携わっている知人から聞いたことがある。
しかし、今は冷凍の技術が進化しただけでなく、食材によっては、一度冷凍させた方が、栄養価や旨味が増すものがあることが分かっているため、
市販の冷凍野菜や自家製の冷凍野菜の利用は、栄養価の面でも、時短調理の面でも有効なのだそう。
例えば、レスキューベジタブルとしても人気が高いブロッコリー。
これを、野菜室保存で1週間かけて使い切ったとしましょうか。
ブロッコリーには、ビタミンCがたっぷりと含まれていますが、日に日にビタミンCの含有量は減っており、
一週間経つ頃には本来の半分ほどの量になっているのだそう。
しかし、購入後すぐに食べない分は軽く塩茹でして冷凍保存すると、
90%近くのビタミンCを残しておくことができ、緑黄色野菜に豊富に含まれているβカロテンは3倍ほど増えるというのだ。
冷凍保存によってβカロテンを増やすという視点から見ると、人参も冷凍向きの野菜のひとつなのだそう。
人参の場合は、βカロテンが増えるだけでなく、ビタミンCやポリフェノールも冷凍によって増えるようなので、
人参嫌いのお子さんに出来るだけ多く栄養を摂取してもらうには、冷凍人参を使うのも手かもしれない。
今度は、女性に嬉しいビタミンCやポリフェノールを増やすという視点で見ると、
ブルーベリーは、冷凍によってビタミンCやポリフェノール、目の健康に良いと言われているアントシアニンが増えるため、
フレッシュなものも美味しいけれど、冷凍タイプではより効率よく栄養素を補うことができるということを、覚えておいても良いように思う。
冷凍によって栄養素を増やすことができるのは、野菜やフルーツだけではない。
例えば、肝臓を健やかに導いたり、疲労回復食材として「シジミ」が挙げられるけれど、
シジミに含まれているオルニチンは冷凍によって通常の7~8倍にまで増えるのだとか。
これを知ってからの私は、冷凍シジミを見つけると思わず手が伸びている。
私自身、全ての食材に対しての知識があるわけではないため、
今回は記憶に残っているものの中から、例として、少しだけご紹介させていただきました。
購入したフレッシュ食材も、通常通りの保存と冷凍保存を、ご家庭の状態に合わせて使い分けることで、
美味しさと、栄養価アップ、時短調理と、様々なメリットがあります。
各々が求めるものや、好みによって取り入れ方も異なりはしますが、
暮らしをほんの少し豊かにするためのヒントにしていただけましたら幸いです。
※食材をご自宅で冷凍する場合は、できるだけ食材が空気に触れないような状態で素早い冷凍を。
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