オレンジ色の太陽が西の空に沈んだ後のわずかな時間、
太陽の雫が夜に溶け出したかのようにも見える残照が、辺りの雲を茜色に染め上げる様は、
紅葉のそれに負けず劣らず力強くて情熱的だ。
このような色合いの空を見ることができるのは、日没直後の数十分ほどの時間だけである。
しかも、お天気が良い時にしか出会えぬ空で、季節や日によって変わる景色は、地球からの贈り物のようでもある。
私はこの昼と夜の、そして、夜と朝の狭間の景色が好きで、タイミングが合えば手を止めて眺めるのだけれど、
カメラマニアの友人に、この時間帯はマジックアワーと呼ばれているのだと教えてもらったことがある。
マジックアワーという言葉は、写真や映像撮影に関する専門用語で、
日の出直前と日没直後の数十分に、昼とも夜とも言えない、ほどよい光量となる時間帯のことを指すようだ。
もともとは専門用語なのだけれど、写真をスマートフォンで手軽に撮る人が増えた昨今は、
昼から夜、夜から朝を繋ぐかのような、繊細で美しいグラデーションカラーの夕焼けや朝焼けを見ることができる時間帯という意味で、
マジックアワーという言葉が広がりつつあるようだ。
この時間帯は、マジックアワーという呼び名の他に、ゴールデンアワー、ブルーアワー、トワイライト、薄明(はくめい)、薄暮(はくぼ)、夕暮れ、黄昏など、様々な呼び名がある。
その中から、どうしてマジックアワーという呼び名が広がりつつあるのかというと、
この時間帯の景色を写真に撮ると、影が消えるというと少々大げさなのだけれど、
影が辺りの景色に溶け込んだ幻想的な景色を撮ることができる魔法の時間帯だということ。
一番想像しやすいのは、建物や人、木々の影が消えたように見え、
建物や人、木々のシルエットだけが茜色の夕焼け空に浮かぶような、映えるような写真や映像だろうか。
そして、やはり、人の手では作ることができない美しい景色に出会うことができる魔法の時間帯ということも含まれているように思う。
気温が下がり、空が澄んでくるこの時季は、この時季ならではの空が広がっています。
普段よりも早く目覚めた朝や、帰宅途中、夕食の支度の合間など、
日の出前や日没直後のタイミングに出会えたなら、ほんの一時、視線を空へ向けてみてはいかがでしょう。
余裕があれば、スマートフォンでパチリ。
マジックアワーが見せてくれる、その日限りの景色を目にすることができるかと思います。
季節も様々な視点で、感性で味わってみてくださいませ。
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