とても上手に、世界中で大切にされている素敵なイベントを取り入れる日本で暮らしていると、楽しみがあるという幸せを感じつつも、
時折、イベントに追われているような錯覚に陥ることもある。
そして、時期が分散していればいいのにと身勝手極まりないことを思ってみたりもする。
外国人の友人が、日本はテーマパークのような国だと言ったことがあったけれど、
これだけ世界の様々を楽しむことができる国は、確かに珍しいのかもしれない。
もとは、自国のものではないけれど、それを知ってみよう、楽しんでみようとして、実際に思いっきり楽しんでしまう辺り、とても自由で平和な国であるように映る。
そのようなことを思いながら、クリスマスインテリアに囲まれながら、少しずつお正月の準備を始めた。
この日に取り出したのは、年中行事のときに使用している漆、漆器類だ。
「漆塗り」というと、丁寧に扱わなくてはいけないから使いにくいし、漆も直ぐに剥がれてしまうというイメージを持っている方も多いと聞く。
しかし、漆は、何層にも丁寧に重ね塗りされているだけでなく、
漆そのものに断熱性、耐水性、防腐性があり、私たちが使う調味料による刺激にも強く、
洗う時も、食器洗い専用の中性洗剤を使って軽く撫で上げるだけである。
特別な日専用として収納スペース奥に追いやられてしまうことが多いけれど、
このように、日常使いにも耐えられるだけの丈夫さがあり、使うほどに、艶が増し、素敵な漆器に成長する特徴がある。
注意しなくてはいけない点と言えば、紫外線くらいだろうか。
私は、漆塗りのランチョンプレートをお正月の装飾に使用した状態で窓際に置きっぱなしにし、
陽射しが当たっていた部分を変色させてしまったことがある。
お気に入りだったこともあり、漆の塗り替えを職人にお願いしたのだけれど、新品同様に復活した状態で戻ってきたそれを見て、思い出したことがある。
以前、数百年前に使用されていた漆器でお茶を振舞っていただいた事があるのだけれど、
お茶菓子が乗せられていた漆器は、どこをどのように見ても、数百年も昔のものだとは思えない程きれいで、粋な器だったことを。
あの器も、何人もの漆職人の技術によって時代を経てきたものだったに違いない。
海外で漆や漆器は、日本を代表する工芸品のひとつとしての知名度が非常に高く、収集家も多いと聞くけれど、
本当に気にいっているものであれば、このようなお手入れを加えながら時代を越えて愛用し続けられる点も、漆器類の醍醐味であるように思う。
そう言えば、漆職人の方の話によると漆塗料のもとの色は透き通った茶色をしているという。
ここに顔料を混ぜ、艶やかで華やかな朱色などを作っているそうなのだけれども、
深みと光沢を兼ね備えた黒色は、顔料の代わりに鉄を混ぜて作るという。
じゃぁ、黒い漆塗りは鉄の色なの?と思ったのだけれど、
この黒色は、混ぜ込まれた鉄が酸化するときに、茶色い漆塗料を黒く変色させることで生まれる色で、
漆でしか作ることができず、他国でも見ることができない、日本ならではの「黒色」なのだそうだ。
これだけ色が溢れている世界に慣れてしまうと、似たような色を簡単に探し当てられる気がしてしまうけれど、貴重な、一期一会の色である。
年末年始は、漆製品を目にする機会、触れる機会もあるかと思います。
そのような時には、今回のお話の中の何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
今年も残り少なくなってまいりましたが、漆のように、日々を丁寧に重ねてまいりましょ♪
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