電車の通路を挟んで真横に位置している座席スペースに、外国人観光客の家族連れが座っていた。
大きなスーツケースと同じくくらいの背丈の男の子が2人いたのだけれど、ひとりは母親の膝の上に座り、絵本を読んでもらっていた。
もうひとりは、父親の膝の上に座り、外国で発行されている日本のガイドブックのようなものを覗き込んでいた。
この手の本、実はとても興味深いものである。
私も外国人の友人にそれらを見せてもらったことがあるのだけれど、
日本人である私が知らない日本が、細かく紹介されていることも多く、読み物として成立するようにも思う。
しかし、そこは外国人の方の感性や視点で作られた本であるため、
初めて見聞きするような内容が、日本での一般常識や風物詩などとして紹介されており、大笑いすることもあった。
きっと、日本で発売されているガイドブックのようなものの中にも、このような大笑い要素が紛れ込んでいるのだろう、
そのようなことを思いながら、母親が読み聞かせをしている絵本の所々を耳で追った。
しばらく電車に揺られていると今度は、父親が息子に、「日本は南国なのに雪が降るんだって」と話す声が聞こえた。
出身地によっては雪に縁がない方もいらっしゃるけれど、日本には雪が降る。
このことを私たちは、当たり前のことだと思っているのだけれど、
外国の方々からすると、日本に雪が降るのは、とても不思議なことだと感じると聞いたことがある。
私が、このような話を聞いたのはヨーロッパの方々からなのだけれど、
彼らにとって日本に対して南国のイメージを持っているというのだ。
南国のフルーツや植物が十分に育つ国なのに、スキーやスノーボード、その他の雪遊びを楽しむことができるということが、すんなりとは理解できなかったのだろう。
「日本は南国なのか?それとも雪国なのか?」という二者択一を迫られたことがある。
以前、こちらで触れた紅葉の話題にも通じるところがあるのだけれど、
日本には四季があるだけでなく、その季節の移り変わりを感じられることや、
季節の中で見て感じられること全てが、私たちが思う以上に神秘的なことのようである。
雪も季節の風も、どのような時期に、どのようなルートを通って吹くのか、日本の地形も含めた様々な条件が合わさることで、
本来ならば同時には体験できないような、両極にあるようなものを体験できているようなのだ。
当たり前のように身を置いている、毎年の季節の流れの中から神秘さを感じとることは、難しいように思うこともあるけれど、
そのような視点で目の前の景色や気温を感じてみると、寒くて冷たい冬も、いつもよりもう少しだけ深く楽しめるような気がしている。
頬を刺すような冷たい風も、熱々の飲み物にホッとできるのも、温かい毛布に包まったときに感じる幸せも、ある意味、今だけのお楽しみ。
もうしばらく続く冬を、存分に体感してみてはいかがでしょうか。
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