ベランダから少し離れたところに植えられている桜木へと視線を移すと、随分と桜の花が開き、薄桃色をした綿菓子のような姿に変わっていた。
暖かい日が続いたこともあり、開くタイミングを計っていた蕾が一斉に開いたのだろう。
しばらくの間、その借景を眺めていたのだけれど喉の渇きを感じ、久しぶりにアイスティーを淹れることにした。
しかし、喉の潤わせたい気持ちが先走った私の淹れ方が雑過ぎたのだろう、クリームダウンを起こしてしまった。
クリームダウンというのは、紅茶葉に含まれている渋み成分のタンニンとカテキンが結晶化することでアイスティーが濁る現象のことである。
透き通ったアイスティーは、濁ったアイスティーよりも美味しそうに見えることが多いけれど、自宅でアイスティーを作ると濁ってしまうと思っている方も多いのではないだろうか。
私もそのような経験があり、紅茶専門店の方に透き通ったアイスティーを淹れるコツを教えていただいたことがある。
ついズボラをしてしまい、手軽な方法で淹れてしまうことも多いのだけれど、お客様へお出しする際や普段の茶葉よりも美味しい紅茶葉で淹れる際に、このコツが役立つことも多い。
少しずつ冷たい飲み物を口にする機会も増えてくる時季ですので、今回は透き通ったアイスティーを作るコツをシェアさせていただけたらと思っております。
ご興味ありましたら、ちらりとのぞいていって下さいませ。
もし、アイスティーに適した茶葉から選んで作りたいということであれば、
苦味成分であるタンニンの含有量が少ないアールグレイやダージリンのファーストフラッシュ(春摘み)、キャンディ辺りを使うことで濁りにくくすることができます。
紅茶葉の中でもタンニンが多く含まれているのは、アッサムやセイロンだと言われております。
しかし、わざわざアイスティー専用の茶葉を用意する必要はなく、
普段召し上がっているお好みの茶葉を使って、出来るだけ透明感のあるアイスティーを淹れるコツを。
先程も触れました通り、クリームダウンと呼ばれるアイスティーの濁りは、タンニンとカテキンが中途半端な冷たさで、ゆっくりと冷めることで起こります。
ですから、できるだけたっぷりの氷を用意し、アイスティーを急激に冷やして濁る隙を与えないのがポイントです。
まずは、濃い目に淹れた紅茶を、たっぷりの氷が入った容器に勢いよく注ぎ入れます。
このとき、ちょろちょろとゆっくりと注いだのでは、タンニンとカテキンに濁る隙を与えてしまいますので、一気に注ぎ入れて下さい。
その後、この紅茶をもう一度、氷を入れた茶こしなどで冷やしながら保存容器やグラスに注ぎ出来上がりです。
ただ、この状態のものを冷蔵庫に入れて保存しますと、冷蔵庫の中でゆっくりと冷えていきクリームダウンが起きてしまいますので、
すぐに飲まないのであれば常温で置いておき、飲むときに氷をたっぷりといれたグラスに一気に注ぐことで、透き通ったアイスティーを楽しむことができます。
注意する点は、アイスティーに使う紅茶は、普段よりも濃い目に淹れるためタンニンも多く、濁りやすさが増していること。
更に、紅茶は時間の経過と共に濁りが増す性質があるため、透明のアイスティーをお客様にお出ししたいということであれば、
出来るだけたくさんの氷を用意しておき、作りたてのアイスティーをお出しすると、間違いありません。
以前友人に、本場イギリスではどんな風にしてアイスティーを淹れるの?と尋ねられたことがあるのだけれど、イギリスにはアイスティーを淹れるという習慣が無い。
それほど暑い土地ではないということもあるのだろうけれど、冷たいものを飲みたいのであれば他のものを。紅茶をわざわざ冷やす必要はないのでは?というような感覚だという。
もちろん、そのようなことを知らなかった私は、イギリスの方々にアイスティーを振る舞い驚かれるという失態を演じてしまったことがあるのだけれど、そのときのお話は、また機会がありました時にでも。
アイスティーを淹れる機会がありました際には、ちょっとした実験気分で透き通ったアイスティーを淹れてみてはいかがでしょうか。
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