テレビを点け、番組表を眺めていると、吹き替え版の洋画の台詞だと思うのだけれど、「何て虫がいい奴なんだよ」と聞こえてきた。
気になるような番組が無くテレビを消したのだけれど、「虫がいい」という言葉に登場する「虫」とは何ぞやと思った。
言葉の意味と虫の繋がりが見えず、私の妙な脳内劇場の幕が開きかけたため、暇つぶしに、この「虫」とやらの正体をのぞいてみることにした。
今回は、そのようなお話でございます。
リアルな虫の話ではありませんので、ご興味ありましら、ちょっとした読書気分でお付き合い下さいませ。
「虫がいい」とは、ご存知のとおり、自分の都合や自分にとって有利な条件ばかりを考え、周りの人のことには意識を向けない、身勝手で図々しい様を表すときに使われている、あの言葉。
人に使うこともあれば、人が話す話の中身に対して「虫のいい話」などと言ったりもする、割と聞きなれている言葉です。
陰陽五行説を元にした東洋医学の考え方に、私たちの体の中には様々な虫がいて、その虫が体の負傷や病といった厄介事をおこすというものがあるのだけれど、
江戸時代の日本では、人間の体には九匹の虫がいると言われており、この虫たちが人の意識や気持ちを操っているという見方があったといいます。
例えば「虫の知らせ」「虫の居所が悪い」というような言葉が残っていることからも、このような考え方やものの見方があったことが分かるかと思います。
そして今回の「虫がいい」ですが、この虫が「いい状態」だという事は、私たちの体内に居る虫が、虫にとって都合がいいように体内で好き勝手にしている状態だということから、
「虫がいい奴」「虫のいい話」という言葉は、自分の都合や自分にとって有利な条件ばかりを考え、周りの人のことには意識を向けない、身勝手で図々しい様を表すときに使われています。
そして、「虫がいい」という言葉の背景に登場する虫なのですが、
上尸(じょうし)、中尸(ちゅうし)、下尸(げし)と呼ばれる3つの虫のことらしく、この3つの虫をまとめて三尸(さんし)、三虫(さんちゅう)と言うのだそう。
この三種類の虫の名は初めて知ったのですが、なんでも上尸(じょうし)は、頭の中に棲みつき、首から上の病気を引き起こしたり財欲を刺激し、
中尸(ちゅうし)は、体の中央である内臓辺りに棲みつき内臓の病気や食欲を刺激するのだそう。
下尸(げし)は、足辺りに棲みつくと言い、下半身の病気や性の悩みを引き起こすのだとか。
目視できない病や自分自身でもどうすることもできないような思いや欲望、形なき不思議なものごとを「虫」に例えることで捉えられるものにしていたのでしょうね。
架空の虫だとは言え、そのような役割を強引に与えられてしまった虫たちを気の毒にも思うのですが、
ある意味厄介であり、面白くもある感情に虫の姿を与えた先人たちの気持ちも分からなくはないように思います。
私の体内には何種類の虫が棲んでいるのだろうか。
そのようなことを思った日。
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