足元にも少しずつ軽やかさが欲しいこの頃、つい目で追ってしまうのは、店頭に並び始めたサンダルだ。
流行を追うことも楽しいのだけれど、私はどちらかと言えば自分好みを追い求めることの方が、より楽しいと感じられるようなところがある。
もちろん、毎年登場する“旬”を纏った数々には、心躍らされて乗ることもあるのだけれど、踊らされて乗りはするけれど流されはしない、ことも増えてきているような気がしている。
流されるときは、流された先で出会う新しい何かを楽しみにトライしてみたりして。
どちらにも魅力的な楽しみがあるので、どちらか片方だけにするという潔さはないけれど、少しずつ自分で、ものごとを選べるようになってきたのだろうと思う。
そしてそれは、自分自身に対しての責任や誠実さのようなものが、10年前の自分よりも少しだけ増したのではないだろうか、とも。
そのようなことを思いつつ、気の向くままに数足ほどのサンダルを試着していたのだけれど、ふと、サンダルにも日本ならではのパーツがあることを思い出した。
女性用のシューズには、アンクルストラップやバックストラップなど、ストラップを様々な位置に施したストラップデザインものがある。
その中には、パチンと押し留めるタイプのストラップ以外にも、シューズの着脱の度にストラップの先端にある金具を抜き差ししなくてもいいように、
サイズを固定した金具の裏側にゴムが忍ばせてあるものや、金具を引っ掛けるタイプのものなど、バリエーションが非常に豊富である。
日本に住む私たちにとってこの金具は当たり前にあるものなのだけれど、海外ではまず見かけない日本特有のものだ。
海外で、ストラップ部分を簡単に着脱できる、引っ掛けるタイプの金具を使ったシューズはあるのかと尋ねると、9割ほどの店員が「このお客さん、妙な事を言うな」という、分かり易いリアクションを見せ、
そのようなものを使わなくてもストラップは外すことができると言われてしまう。
在って当たり前の環境にいた私と、無くて当たり前の環境にいた店員との会話が噛み合わないのだ。
そのやり取りを見ていた現地の友人が、そっと教えてくれたことがある。
この国の人たちの多くは、日本人のように靴を脱いで家に上がるという習慣がない。
だから、靴を履いたり脱いだりする動作をシンプル化しようという必要性がないから、そのような発想もないのだと。
だから、柊希の質問は彼ら側からすれば妙な質問だと受け取られても仕方がなく、そのような靴が欲しいのなら日本製のものか、日本で企画されたものを選ぶ方が早いのだと。
ちょっとしたことなのだけれど、このようなところにも各国の文化や習慣が影響しているのかとハッとしたし、
自分にとって当たり前すぎると、それが相手にとってもそうであるという前提で向かっていってしまうことにもハッとしたことを思い出した。
そして、それ以降の私は、そのような質問をすることも無くなった。
日本でインポートシューズを手に取るとき、つい、引っ掛けるタイプの金具かどうかを確認してしまうのだけれど、未だ日本特有の金具であるように思う。
久しぶりに、ストラップひとつから色々なことを感じたあの日のことを思い出した日である。
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