今年は梅雨らしい梅雨が来ないまま梅雨が明けてしまうのではないだろうか。
なかなか降らぬ雨にそのようなことを思いながら紫陽花を眺めた日もあったけれど、振り返れば、今年もしっかりと梅雨と呼ぶに足る雨が降った。
こうしてしっかりと帳尻を合わせてくるのだから、やはり自然には敵わない。
今朝はそのようなことを思いながらピッと可愛らしいエアコンのスイッチ音をリビングに響かせた。
怖い話はあまり得意ではないのだけれど、気温も着々と上がってきているので、この辺りで怪談話の裏側をちらり、のぞいてみるのはいかがでしょうか。
ストレートに怪談話ではない辺りは、柊希のご愛敬ということで、お付き合いいただけましたら幸いです。
怪談話に登場するキャラクターと言えばの問いかけの答えに、四谷怪談(よつやかいだん)に登場する「お岩さん」を挙げる方もいらっしゃるかと。
四谷怪談(よつやかいだん)とは、江戸時代に起きたと言われている事件をもとにして作られた日本の怪談です。
この四谷怪談(よつやかいだん)のあらすじをおさらいしておくと、四谷の町に、とある一組の夫婦がおりました。
夫の名を伊右衛門、妻の名をお岩と言います。
伊右衛門はお岩という存在がありながら、お金に目がくらみ、お梅という名の女性と結婚することを決めてしまいます。
伊右衛門は、自分以外の人を使って妻であるお岩さんに毒を盛り、彼女の顔はみるみるうちに醜くなります。
自分の顔を鏡で見たお岩さんは発狂し、誤って自分に刀を向け、命を落としてしまいます。
その後、伊右衛門は計画通り、お梅と祝言を挙げるのですが、醜い姿になったお岩さんが伊右衛門の枕元に現れたため、
その姿に怯えた伊右衛門は、お岩さんの首を刀で切り落としたのですが、切り落とした首はお岩さんのものではなく祝言を挙げたばかりのお梅の首だったというお話です。
あぁ、あのお話ねと久しぶりに思い出された方も多いかと思いますが、この登場人物であるお岩さんと伊右衛門さんは実在した方々だと言われています。
夫婦不仲説でもあったのだろうかと、余計なお世話を抱きそうになる創作話ですが、実際のお二人は非常に仲が良いご夫婦だったと言われています。
しかし、生活が困窮したため、お岩さんが奉公に出て家計を手助けすることになったのだとか。
その後、お岩さんと伊右衛門さん夫婦は、順調に蓄えを増やすことができ困窮状態から抜け出したのだけれど、
お岩さんは、この大変な時期に家の敷地内に祀っていた屋敷社に熱心に手を合わせていたそうで、近所の人たちはお岩さんの幸運にあやかろうと、この屋敷社をお詣りするようになったといいます。
そして、この屋敷社が通称「お岩さま」で知られている東京都にある於岩稲荷田宮神社(おいわいなりたみやじんじゃ)です。
それならば、私たちが知っている物語に登場するお岩さんとは?という疑問が湧きますが、
これは、お岩さんが亡くなって数百年以上も経ってからも人々から慕われていたお岩さん人気に注目した歌舞伎作家が、
今で言うところの「ウケる話」にしようと様々な事件話も参考にしつつ、この四谷怪談を書き上げたと言われています。
ですから、歌舞伎でこの演目を扱うときには妙な事件が起きてしまわぬよう、必ず、皆が於岩稲荷田宮神社(おいわいなりたみやじんじゃ)にお詣りするそうなのだけれど、
お岩さんの立場からしてみれば、あることないことを勝手にでっち上げられているわけだから、挨拶のひとつくらいあって当然。
そう思われていてもおかしくないように思います。
暑い夏の日に「お岩さん」の名を見聞きする機会がありました際には、作りもののお岩さんだけでなく、働き者で慕われていた本当のお岩さんのことも、ちらり思い出してあげてくださいませ。
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