外出先でとても素敵なパンプスに目が留まった。
移動中だったけれど、最近の出会いにしては珍しく、長年探し続けていた愛すべき人に出会ったかのような衝撃を受けたこともあり、吸い込まれるようにして店内へと足を踏み入れた。
他にも素敵なパンプスが飾られていたと思うのだけれど、他のパンプスには目もくれず、一目惚れの一足の前へと向かった。
店員が、そのような勢いで入店してきたお客を見れば、「売り上げ確保」と思うかどうかまでは分からないけれど、ほんの少し期待してしまうのかもしれない。
外から見つけたパンプスを実際に手に取ると、外から見ていたときよりも素敵さが数割ほど増したように感じ、今日はツイていると思った。
そして、店員に促されるままソファに座り、試履きをさせてもらうことに。
この時点で、頭の中には幾通りかのコーディネートが出来上がっていたのだけれど、スペシャルな出会いは、そう簡単には訪れないのである。
足を滑らせるようにしてパンプスに入れて立ち上がった瞬間、「これは違う……、残念だけれども、違う」と感じてしまったのである。
そして、その心の声が顔に出てしまっていたのか、「少し違いましたか?」と顔を店員に覗き込まれ「少し違いました」と答え、なくなく足をパンプスから引き抜いた。
私にとってのガラスの靴ではなかったのだなと気持ちを切り替えていると、店員が「足の小指は体のバランスを取る際にとても重要なパーツだから、できるだけ小指をほぐすようなマッサージをした方がいい」というアドバイスをくださった。
そのマッサージとは、片手で足の小指付近を掴んで足全体を安定させ、もう片方の親指と人差し指で足の小指の付け根を摘まみ、足の小指を捩じるように左右にクルクルと回転させるのだそう。
そして、この回転を小指の先へと移動させることで、足の小指全体がほぐれるのだとか。
足の小指は靴の中にぎゅうぎゅうに押し込まれたり、テーブルの脚の角にぶつけられたりといった日々を送っているけれど、実は、私たちの日常をバランス感覚という点から支えてくれている重要パーツなので、小指が縮こまったり浮いた状態にならないようにほぐす必要があるそうだ。
しかし、私の記憶に強く刻まれたのはこの話題ではなく、足の小指の関節の話題である。
私は、自分の足の小指を構成している関節の数を数えたことなどなかったのだけれど、通常は指の根元から数えて3つあるけれど、中には関節が2つという方もいるのだそう。
そして、日本人の8割は関節が2つしかなく、関節を3つ持っている方が少数派だというのだ。
もしかしたら、まだ辛うじて3つあり、2つへ退化している最中かもしれないので、正しいことはレントゲンを撮ってみなくては分からないけれど、木登りなどが不要になったこともあり、私たちの小指の構成に変化が表れている最中なのだとか。
長年探し続けていた愛すべき人に出会ったかのような衝撃を与えてくれたパンプスとのご縁は幻に終わったけれど、この日私は、それとは異なる衝撃を胸に店をあとにした。
そして、自分の足の小指の関節を改めて数えてみると2つのような気がして、「これが退化!?」と不思議な気分に。
私の足の小指の関節もまだ辛うじて3つあり、2つへ退化している最中かもしれないので、やはり正確なことはレントゲンを撮ってみなくては分からないことではあるけれど、周りの人の小指の関節チェックをしたくてたまらないこの頃である。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/