昼下がりの日差しをリビングの陽だまりで浴びながら、年末へ向けてのカウントダウンのシュミレーションを脳内で始めてみたのだけれど、場所が悪かったのか、私の意識はすぐに陽だまりの何とも言えぬ心地良さに絡めとられてしまった。
そして、手にしていた手帳を放り投げて、その場に寝転がり、あちらへゴロゴロこちらへゴロゴロを繰り返す。
しばらくの間、飽きもせずにそうしていたのだけれど、その時間が幸せ過ぎてどっぷりと浸りきってしまいそうな自分を奮い立たせて、キッチンに立った。
キッチンのワークトップにお行儀よく並んでいるのは、多めに買い込んだ春菊である。
春菊は一年を通して気軽に買うことができる野菜だけれど、10月から春先辺りまでが旬。
特に、旬に入ったばかりのこの時季のものは、葉が柔らかく香りも十分で夏のそれと比べると美味しさが数割ほど増すよう思う。
お鍋が骨身に染み入る時季ということもあり、お鍋の食材として手に取る方も多いけれど、私はどちらかと言えば生食が好みで、サラダ用にも購入する。
アクが強い印象を抱かれがちな野菜だけれど、想像するほどアクやエグミはなく、香りが苦手でなければサラダにするのもおすすめである。
ワタクシ、海外暮らしの中で鉢植えの春菊を見つけて興奮し、購入したことがある。
ヨーロッパではハーブのように食すのかと一人勝手に思い込んだのだけれど、鉢植えされた春菊の多くは鑑賞用で、春菊を食用として口にするのはアジア地域だけだということを、そのとき初めて知ることに。
食事会の席だったのだけれど、子どもの頃から春菊を食材として親しんできた私は、英国人たちの目の前で悪びれる様子もなく、「お花もきれいだけれど、お花に栄養を取られてしまう前に葉っぱを食べると美味しいよ」と笑顔で言い、葉を毟り取って口に運んだのだ。
当然、彼らはフリーズである。
フリーズの原因が、自分が得体の知れない存在として映っていたからだと理解できたときの凹みっぷりと言ったらなかった。
しかし日本食ブームの波に乗ってということだろう。
春菊の食用としての知名度も少しずつではあるものの上がっていると聞く。
この春菊事件は私にとって、自分の常識ほど慎重に、そう感じた出来事でもある。
春菊の栄養素と言えば、緑黄色野菜よりも豊富に含まれているβカロテンを筆頭に、ビタミンやミネラル、食物繊維までとサプリメント級で、免疫力アップにもってこいです。
更に、あの個性的な香りには胃腸の働きを促す成分が含まれていると聞くため、これからの季節には心強いレスキューベジタブルではないかと思います。
お嫌いでなければ、今回のお話の何かしらをチラリと思い出していただきつつ、召し上がってみてはいかがでしょうか。
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