普段よりも随分と早起きをしたその日、遠くの東の空が濃いオレンジ色に色づき始めていた。
目の前の空に浮かぶ雲には、昇ってくる太陽のオレンジ色が反射して辺りを照らしており、淡いピンク色とオレンジ色を混ぜ合わせたような美しい朝焼けが広がっていた。
普段よりもありがたい景色であるように感じられるのは時節柄だろうかとを思いながら、この日も、温かい飲み物で体を目覚めさせることから始まった。
少しずつ年末年始の慌ただしさや華やかさが落ち着きを見せ始める頃というのは、やる気が徐々に高まってくる頃でもあるのだけれど、年末年始の様々な疲れが体や胃腸の動きを鈍くさせ、心と体が噛み合わないことがある。
他にも、やる気に満ち溢れており、年明けから力強く前進している人を目にして、焦ってしまうこともよくあることである。
しかし、そのような時ほど、急がば回れ。
焦らずに、まずは七草粥を口にして体内を整えることで、1年のスタートを気持ちよく切ることができるようにも思う。
私は調子の良し悪しに関わらず、1月7日は七草粥を口にすることにしている。
一番の目的は、胃腸を休めながら、年末年始に増えたであろう体重の調整を始めることを体に告げることなのだけれど、同時に一年間の無病息災と邪気祓いも願っておこうという欲張り心があったりもする。
確か3、4年ほど前だったと思うのだけれど、七草粥を作る折りに歌われる「七草囃子」というものがあることを知った。
七草囃子の囃子詞(はやしことば)は、各地によって少しずつ異なるようなのだけれど、私が見聞きしたものは「七草なずな、唐土(とうど)云々渡らぬさきに、七草なずなトントントン」というもの。
唐土(とうど)とは、中国などの大陸を意味しており、当時は大陸から渡ってくる鳥が疫病を運んできたり、農作物を荒らすと考えられていたといいます。
だから、まな板の上で七草を刻みながら、この七草囃子を歌うのだけれど、この囃子詞(はやしことば)には、大陸から疫病やその他の厄介ごとがやってこないよう、
それらを運んでくるとされる鳥を追い払う意味や、農作物が害鳥に荒らされてしまわないようにという願いがこめられているだけでなく、忍び寄る邪気や病とも重ねて、邪気や病を祓う意味も込められているという。
最後のトントントンは、七草を刻む音なので省略することもあるようなのだけれど、今夜、七草粥を召し上がるご予定がある方は調理の際に、ちょっとした遊び心と一緒に「七草なずな、唐土(とうど)云々渡らぬさきに、七草なずなトントントン」と口ずさんでみてはいかがでしょうか。
お手軽なフリーズドライの七草を使う方も、気分は七草を包丁で刻むイメージで是非。
※七草粥や七草爪のお話にご興味ある方は、下記の過去記事もどうぞ。
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