既にあちらこちらで寒桜ではない桜が咲いていると見聞きする今年は、早春をゆっくりと楽しむ間もなく、本格的な春がやってきそうな勢いだ。
先日は、街路で沈丁花を見つけた。
まだ、微かにそれだと分かるほどの香りしか放っていなかったけれど、あと数日もすれば、あの個性的かつ素敵な香りが風に乗って遠くまで春を告げに行くのだろう。
春を告げる花にも色々とあるけれど、私が今飾りたい春告げ花はヒヤシンスやムスカリ。
どちらとも、神楽を舞うときや歌舞伎などで使われる神楽鈴(巫女鈴とも)のようにも見える花である。
普段は、ブルー系のそれらを手に取るけれど、今年は珍しくピンクを選びたい気分。
しかも、ヴィヴィットなそれではなく、とびっきり淡い、今にも白に溶けて消えてしまいそうなピンクである。
春の陽気は、さり気なく普段とは異なる自分を刺激してくることがあるけれど、このような気分には積極的に乗って吉。
そう思う質なので、馴染みの花屋でご縁があれば即決しようという思いを巡らせながら沈丁花ゾーンを通り過ぎた。
色と言えば、廃棄食材を染料の材料として使用しようという試みが始まったと、何かの記事で目にしたのは今月である。
トマトケチャップでお馴染みのカゴメやマヨネーズやドレッシングでお馴染みのキューピーをはじめとする名が広く知られている企業が、染色材料となる資源を提供するという。
この廃棄食材の中から生まれた染料は天然染料という位置づけになるのだけれど、生地を染める際に使用する天然染料と化学染料のうち、天然染料の割合を大きくすると、自然由来の優しい色が出る上に、肌あたりも良いそうで、このような過程を経て染められた生地が使われた素敵なお洋服が市場に登場するのだそう。
目にした記事には、既に破棄食材で作られた染料で染められたお洋服が載っていたのだけれど、その色を見て、子どもの頃に、摘んだ草花を水の中で潰して作った色水の色を思い出した。
そうそうそう、こういう優しい色をしていたと。
自然由来の色は、絵の具のように少量で濃い色が出るわけではないけれど、どのような時にも人に馴染む色をしているように思う。
既に、この染料が使われているお洋服やシューズなどは販売されているのだけれど、様々なカテゴリーのスペシャリストの知識や技術、アイデアの終結だからなのだろう。
廃棄食材から作られた染料を使っているとは想像できないくらい、クオリティの高いものが生まれていた。
本気になれば、なんだって出来るのかもしれない。
そのようなことを思った色のあれやこれやである。
ちなみに、廃棄される予定だった食材に染料としての第二のお役目を与えるプロジェクトは、「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」と呼ばれているようだ。
目にした折には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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