一斉に開花した沈丁花にミツバチが集まっていた。
ミツバチの群れを横目に思わず沈丁花との間に距離を取ってしまったけれど、久しぶりに耳にしたミツバチの羽音と沈丁花の深く爽やかな香りに少し気分が高揚した。
近年、ミツバチが大量死したり大量失踪したりしているという話題に触れる機会があるけれど、近頃のミツバチ事情はどうなのだろうかと思った。
そう思ったのは、私がこの日目にしたミツバチは5、6匹だったけれど、一カ所でこれだけの数のミツバチを目にしたのは随分と久しぶりの出来事だったからである。
青い鳥の作者、メーテルリンクが著書の中で、ミツバチが絶滅してしまったら、その数年後には人類も滅びると言っていたと言う話がある。
彼がそのようなことを言った理由は、私たちの生活がミツバチによって手助けしてもらっているからである。
ミツバチは花の蜜を集めているだけではなく、農作物の受粉の手助けをしてくれている。
野菜や果物といった食材だけでなく、牛たちが口にする干し草もミツバチの受粉に頼っているという話があり、ミツバチが消えてしまえば乳製品も口にできなくなるということである。
更には、乳製品が入手できなくなるということは、乳製品を原材料のひとつに扱っている食品も、今のように気軽に楽しめなくなるということも想像できる。
「ミツバチの数が減っているらしい」と聞いてすぐに、ここまで想像することはできないけれど、このようなピンチは一見、自分の生活とは関係ないようなところから忍び寄ってくるようである。
ミツバチが大量死したり、集団失踪したりしている理由は色々とあるそうで、明確な理由は未だ不明のようだけれど、その原因の多くは、人間による人間ファーストの世の中だからだと言われている。
人間には無害に等しい農薬を使っているけれど、その農薬がミツバチたちを殺していたり、電磁波の影響により、働きバチたちは方向感覚を失って巣へ帰ることができなくなり、
巣に残された女王蜂や幼虫たちは食べるものが無くなり、ハチの巣丸ごと死滅してしまった例も確認されているのだとか。
日本では、稲穂に使われた農薬によってミツバチに悪影響が及んでいることが確認されており、ミツバチに悪影響が及ばないように配慮するよう呼びかけられている。
フランスでは2022年だったと記憶しているのだけれど、この頃を目途に、公園やその他一部の地域での農薬使用が禁止される流れなのだとか。
今年に入り、働き方を半ば強制的に見直す流れの中に置かれているけれど、幅広い意味で暮らし方そのものを見直す時期にあるように思う。
羽音を響かせながら密を吸うミツバチを見て、そのようなことを思った日。
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