底に車輪が付いた移動式プランターがトラックの荷台へ積み込まれていた。
白いプランターの中には緑一色の植物が植えられていた。
見たことがある植物だったけれど、その名を思い出せぬままその場を通り過ぎた。
その後、1週間ほど経った頃だろうか、その植物が半夏生(ハンゲショウ)だったと分かった。
夏至の日から数えて11日目のことを半夏生(ハンゲショウ)と呼ぶけれど、この時季に花を咲かせ始めることから半夏生(ハンゲショウ)と名付けられた植物である。
それだけの特徴であれば記憶に強くは残らなかった気もするのだけれど、半夏生(ハンゲショウ)は、同じ呼び方で「半化粧」と記されることがある。
その所以は、通常は緑一色の葉に覆われている植物なのだけれど、花が咲く時期だけ葉っぱの半分が白く染まるからである。
以前、夏の夜に花を咲かせる植物は、白い花を咲かせるものが多いという話に触れたことがあるのだけれど、半夏生(はんげしょう)もあの植物たちと同じで、葉っぱを白く染めることで虫たちに自分の存在をアピールし、受粉してもらう算段なのだとか。
この、葉っぱを半分だけ白く染める様子が、お化粧をしているように見えることから「半化粧」と記されるようになったという説があるのだ。
そして、面白いのは花を咲かせ受粉が無事に終わった後である。
もうお化粧する意味はないという気持ちからなのか、やはりスッピンが心地良いという気持ちからなのか、「半化粧」は白く色を変えた部分を緑色に戻し、本来の緑一色の姿である「半夏生」の姿に戻るのだ。
夏の日射しの下で目にする、緑と白のコントラストが美しい半夏生(ハンゲショウ)は、涼やかな美しさで目を惹くことを思うに、半夏生(ハンゲショウ)のアピール力は、虫たちだけでなくヒトにも通用するもののようである。
その日私が目にした緑一色の植物は、受粉が無事に終わりスッピンに戻った半夏生(ハンゲショウ)だったようだ。
半化粧といえば、我が家には昨年の冬に購入したポインセチアがある。
小ぶりなものを選んだこともあり、短いお付き合いになるだろうと心の準備をしていたのだけれど、未だ健在で二回りほど大きくなった。
そのポインセチア。
当時は、これぞクリスマス色だと思わせるような赤色の葉を付けていたのだけれど、月日の経過とともに緑色の葉が増え、いつの間にかポインセチアの面影を持たぬ深緑一色となった。
しかし、ここ1週間ほどで全体がほんのりと赤く染まり始め、今度はポインセチアが半化粧の準備である。
日中の残暑に気持ちを引っ張られがちではありますが、涼しい時間も増えつつあり、蝉の鳴き声は秋の虫たちの鳴き声に変わり、自然界は着々と秋支度を始めている様でございます。
夏の名残りや小さな秋を感じつつ、夏と秋のあわいの一時を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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