この日の外出目的は散歩である。
気付けば家に缶詰状態の日が続いていたため、人間らしい生活を取り戻そうと外の空気を吸いに家を出た。
人の往来も車の往来も、すっかり元通りといった自宅付近の風景を眺めながら、一番近くにある公園を目指した。
手っ取り早く街中の音から離れ、緑を堪能できる場所ということもあって、お気に入りの場所のひとつだ。
立派な木々に囲まれた公園内に入ると、草木の青い匂いと少しひんやりとした空気が出迎えてくれた。
来る度に感じる、ひんやりとした空気の正体は何だろうか、気のせいだろうかと、この日も思いを巡らせたのだけれど、ふと、これも例のフィトンチッドではないだろうかと思った。
フィトンチッドとは、過去に幸せのレシピ集内でも触れたことがあるのだけれど、草木自身が自分の身を森に棲む様々な微生物から守るために発散している物質のことで、私たちはこれを「森の香り」と呼んでいる。
その公園は森と呼べるような規模の公園ではないけれど、植物たちが近辺に棲む様々なものから自分の身を守っているサインなのかもしれないと思ったのだ。
そうとくれば、私(ヒト)にとっては草木からのお福分けとも言えるハッピーな空気ということ。
しっかりと吸い込んで、体中をリフレッシュさせることにした。
人の姿が疎らな公園を、フィトンチッドを吸い込みながら歩いていると、正面から犬を8匹連れた女性がやってきた。
大小様々な犬たちを一度に散歩させるのは、想像以上に大変だと思うのだけれど、軽やかな足取りで通り過ぎて行った。
珍しい光景だったこともあり、つい振り返って彼らの数を再カウントした。
1、2、3……7、8、やっぱり8匹連れてのお散歩だった。
国内外で犬のお散歩ビジネスなるものが静かに定着しつつあるようだけれど、それだったのではないかと思う。
犬のお散歩ビジネスとは、仕事で忙しい、出張が多い、体調を崩してしまったなど、利用者の都合は様々だけれども、飼い主に変わって犬たちをお散歩させたり、決まった時間に水や餌を与えてくれる犬のお世話代行サービスである。
私は単純に、飼い主と一緒に行くお散歩だからペットも嬉しさ倍増なのではないだろうかと思ってしまったのだけれど、違う角度からみれば、愛する愛犬の為に、どのような状況下のときでもお散歩を欠かしたくないという飼い主の大きな愛情でもある。
更に犬目線を想像すると、犬もたまには違う人とお散歩してみたいとか、犬友を作りたいとか思うものなのだろうか。
その辺りは、本人(犬)たちにしか分からないけれど、需要と供給のバランスが取れているようで、お散歩ビジネスは、都心を中心に増えつつあるようだ。
外国では既に定着しているビジネスということもあり、一度に複数の犬の散歩ができる大きな公園などでは、トラブルを防ぐために、一度に散歩させられる犬の数が決められていることもある。
そのうち日本の公園の入り口にも、連れて入ることができる犬の数が記されるようになるのだろうか。
そのようなことを思いながら公園を散策した日。
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