無性にネギトロを頬張りたくなった。
きっと、数日前から美味しそうなネギトロ画像を目にしたり、そのような話を耳にする機会があったものだから、私の口がネギトロを欲しているのだろう。
しかし、ただでさえ夏の日射しと暑さに弱い私に、この炎天下の中を買い出しに行く気力が湧くはずもなく、自分の口を騙し騙し過ごしていたのである。
いつだったか、ネギトロは、マグロのトロ部分を叩いたものにネギを合わせたものではないと知る機会があった。
そうではないと言われても、私の頭に浮かぶネギトロは巻き物や軍艦巻きといった、見た目の違いはあるものの、具となる部分はマグロとネギを合わせたものである。
こんなにも名前と見た目が合致しているというのに、これが語源じゃないと言うならば、何が語源なのだろうか?と思った。
ネギトロの語源は具材によるものではなく、削ぎ取ることを表す「ねぎ取る」という言葉が語源なのだとか。
私たちが口にしているネギトロの中には、立派な部位を使って作られているものも多いけれど、本来のネギトロは、食べずに捨てられていたマグロの骨の周りに付いている身やトロと呼ばれている脂身部分を、丁寧にねぎ取った(削ぎ取った)ものを使って作られた、まかないメニューだったという。
そして、このまかないメニューをお客様に食べていただいたところ、思いのほか好評だったらしく、そのお店から全国に広まったそうだ。
ネギトロの誕生エピソードを知れば、ネギが入っていなくてもマグロをねぎ取って叩いたものであれば違和感を覚えることなくネギトロと呼べるけれど、
偶然にも、名とは関係なく合わせられた薬味の「ネギ」が「ねぎ取る」と重なり、多くの人の脳裏にはネギトロはネギとマグロを合わせたものだというイメージが強く定着したようである。
ここまでの話だけで十分、最もらしい話に聞こえるのだけれど、名付け親の方は当時の地元で人気があった某店の「とろろご飯」、「むぎとろ」の響きに近づけてそのまかないに「ネギトロ」と名付けたというエピソードも残っているようだ。
そのようなエピソードを知っている今でもネギトロと聞いて私が思い浮かべるのは、マグロとネギの組み合わせであることを思うに、この食材の組み合わせにはエピソードを超える魅力があるように思う。
そのようなことを思いながら、ネギトロの買い出しだから気を逸らすことを試みたけれど、作戦失敗。
その日はネギトロ熱が収まりそうになく、買い出しに行こう!と腹を決めた夕暮れどきである。
皆さんが思い浮かべるネギトロは、ネギあり、ネギなしどちらでしょうか。
ネギトロを召し上がる機会がありました折には、このようなエピソードをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
本日も口福な時間をお過ごしくださいませ。
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