今年の夏も幾度となく甘酒のお世話になった。
聞くところによると、酷暑続きの昨今は冬の甘酒よりも夏の甘酒人気の方が高いのだとか。
酒粕から作る甘酒だけでなく、米糀から作られるノンアルコールタイプの甘酒の存在も知られるようになり、「飲む点滴」や「飲む美容液」といった触れ込みや、おしゃれなパッケージ、甘酒のアレンジレシピなどが功を奏したのだろう。
確かに、甘酒は冬のもの、白酒の代わりにお雛様の時季に口にするものといったイメージは程よく薄れ、一年を通して楽しむことができる一品として定着したように思う。
私が以前住んでいた自宅近くにあった神社では、時折、確か季節の変わり目の頃だったと記憶しているのだけれど、甘酒を振る舞ってくださる日があった。
一度だけ、その甘酒をいただく機会があったのだけれど、そこで、甘酒は古の頃「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれていたことと、日本各地の神社には、「一夜酒(ひとよざけ)」に関する似たような言い伝えが残っていることを知った。
甘酒が「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれるようになった理由は、古の時代も甘酒は半日ほどの時間で造ることができたからだといい、
日本各地の神社に残っている、似たような言い伝えとは、古の頃、神社の方々が神社に集まってくる神様たちをおもてなしするために、一夜にして大量のお酒「一夜酒(いちやざけ)」を造って神様たちに振る舞ったところ、とても喜んでくださったというものだ。
時代を経る中で、暑気払いや滋養強壮ドリンクとして手軽に楽しむことができる飲み物と化した甘酒だけれども、もとは御神酒のひとつだったようだ。
その日は、そのような話を思い出しながら自宅にあった甘酒でシャーベットを作ることにした。
程よく凍らせた甘酒は、シャリシャリとした食感と口の中に広がるお米の優しい甘さが、晩夏のデザートにピッタリである。
冷凍庫には甘酒を、スマートフォンには食べごろを告げるタイマーをセットし、準備完了。
あとは出来上がりを待つだけだったけれど、意味もなく開けた冷蔵庫内にあった日本酒に目がとまり、つい「みぞれ酒」を欲してしまった。
みぞれ酒。
言葉が表しているとおり日本酒のシャーベットである。
日本酒は簡単には凍らない不思議な液体なのだけれど、冷凍庫でじっくり丁寧に冷やしたものをグラスに注ぎ入れると、シャーベット状に変化しながら流れ出てくるのである。
暑い夏の夜にこそテラスで「みぞれ酒」としゃれこみたいところだけれど、この熱帯夜では、あっという間に溶けてしまうため、重陽の節句やお月見の頃のお楽しみにとっておこうと思い止まり、冷蔵庫の扉を閉めた。
アルコールあり、なしの違いはありますけれど、双方ともお米の国ならではの味であるように思います。
お嫌いでなければ、お好みや気温に合った楽しみ方で召し上がってみてはいかがでしょうか。
その際に、今回のお話の何かしらを思い出していただけましたら幸いです。
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