ガーデンチェアーに腰かけて少し先の空を眺めていた。
大切な人と随分と遠い日に交わした会話が脳裏をよぎった。
その時の会話は、今も尚、私に寄り添ってくれている。
遠すぎて、どうしてそのような話になったのかさえ
もう覚えてはいないのだけれども、
あの時の、あの瞬間の、互いの間に流れた時間や息遣い、
行きかった言葉たちは今も私の中に鮮明に残っているのだ。
そして、それは時々、前へ進めなくなり立ち止まった私の前に
不意に立ちのぼる湯気のようにゆらりと現れる。
またある時は、記憶の宝箱の中からそっと取り出しては眺めてみたりもして。
それは、透き通るほどの瑞々しさをもった天然石を空にかざして
石の中を泳ぐキラキラとした光を目を凝らして眺める時のような気持ちにも似ている。
きっと、あの日の事を覚えているのは私だけなのだろうけれど、
私はこれから先もあの日のことを時々、
記憶の宝箱を覗き込んでは取り出し、眺めるのだろう。
ガーデンテーブルの上のマスカットティーに手を伸ばすと、
グラスの中の氷がカランと音を立て一瞬、グラスの底へと沈んだ。
見上げた空は夏を先取りしたようで日差しがキラキラと眩しい。
その弾けそうな日差しを全身に浴びていたら
私の心の中にほんの少しだけセンチメンタルな陰が伸びてしまったようだ。
何かで目にした言葉、
どこかで耳にした言葉、
誰かと交わした会話など、あなたの中に在る言葉たち。
あなたに寄り添ってくれている言葉や
支えになってくれている言葉、
元気の源のような言葉はありますか?