炊き立てのご飯を眺めていたら、
子どもの頃に読んだ本に登場したあるシーンを思い出した。
お婆さんが炊き立てのご飯を塩おむすびにする。
そして、今日は特別だよと言っておむすびに海苔を貼りつけてくれるシーンだ。
どこにでもあるようなワンシーンなのだけれど、
ごはんの艶、ふっくら感、立ち上る湯気や、ほのかに甘い香りなどの描写が素晴らしく、
そのシーンを読む度に「おむすびを食べたい」と思っていた。
その本のタイトルも、作者も、そのストーリー自体もキレイさっぱり忘れてしまっているため
再びこの本を手に取ることは困難だろうと思っているのだけれど、
あのシーンをもう一度、活字で読みたいなと時々思う。
そのようなことを思い出しながら、おむすびを握る準備を始めた。
海苔、皆さんはどのくらいの頻度で召し上がりますか?
お手軽な食材のひとつだけれども1日2枚ほど食べるだけで、
ビタミンB1、B2、Aは1日に必要な摂取量を満たしてくれる優れものです。
他にも良質なミネラルやビタミン、食物繊維に鉄分、カルシウムなどもたっぷり含まれているので
「海苔は1日2枚で医者いらず」という言葉まで存在するのだとか。
お手軽過ぎて軽んじてしまいそうになりますが目新しい食材に手を伸ばさなくとも、
私たちの身の回りには子どもの頃から慣れ親しんだレスキュー食材が既に控えてくれているのです。
そして、驚くことに、この海苔を消化できるのは日本人だけ。
これは、数年前にフランスの研究グループが英科学誌「ネイチャー」に発表した論文の内容で、
当時、少しだけ日本でも話題になりました。
今回は、そのようなお話をすこし、と思っております。
日本では古より様々な海藻が食べられてきました。
その中でも海苔は最高級品として扱われ、
平安時代の貴族たちは海苔を佃煮にして食べておりましたし、
税金の代わりに朝廷へ納められた時代もありました。
これが江戸時代辺りから養殖の技術などが確立され紙漉きの技術が取り入れられ
紙のような状態の海苔が登場し、誰もが口にできる食品のひとつとなりました。
面白いのは、明治時代に来日した西洋人たちの反応で、
日本人は黒い紙を食べているぞ!と驚いたのだとか。
こうして古より生の海藻から焼き海苔まで幅広い海藻を食してきた日本人は、
生の海藻を食べることで生の海藻に付着していたバクテリアを体内に取り込み、
海苔に含まれる成分を分解し、消化できるような体質になったのだそう。
偶然とはいえ、先祖が海藻を食べ続けてきたからこそ、
先天的にこの消化する力を持っているというのです。
ですから、焼き海苔など一度熱を加えたものは外国人も消化できますが、
海藻サラダなどの生の海藻を消化できるのは日本人だけなのだそう。
海藻類は体内をお掃除してくれますし、
カロリーこそ十分ではないもの見方を変えればヘルシー食材です。
ヘルシーかつ私たちの体に必要な栄養素をたっぷり含んでいるなんて魅力的ですよね。
あまりにも身近過ぎて空気のような存在になっている海苔や海藻類ですが、
この辺りで見直してみてはいかがでしょう。
私も、1日2枚でいいなんてズボラな私にもぴったりじゃない、と
改めて海苔に意識を向けている今日この頃です。
高血圧などを気にされていたり塩分が気になる方は、
素焼きされただけの海苔と味付け海苔を使い分けられるとからだにも優しいですよ。
私は血圧が低すぎるので意識して塩分を摂らなくてはいけない体質なのですが、
素焼きの海苔の方が好みなのです。
なかなか思うようにはいきませんが、
今日も美味しく楽しく健やかにまいりたいと思います。
皆さんもご一緒に、美味しく、楽しく、健やかに!いかがですか。
関連リンク:Nature Research