サクランボの旬と言うだけあって、フルーツショップには艶々した宝石のようなサクランボが数種類並んでいた。
随分と前に仕事をご一緒した方のご実家がサクランボ農園を営まれており、サクランボのお話を色々と聞かせていただいたことがあった。
サクランボは日持ちの短いフルーツだけれども、だからと言って冷蔵庫保存をしてしまうと、みるみる風味が落ちてしまうのだという。
野菜室ならどう?と愚問を投げかけた私に、彼女は首を横に振りながら、食べる前に少しだけ冷蔵庫で冷やして食べるのが正解だと笑顔で答えた。
それからは、彼女の教え通りの方法でサクランボを食べている。
そして、サクランボはフルーツの中で群を抜いて鉄分が多く含まれていることを知ったのもこの時だった。
コーヒーや紅茶を1日に何杯も召し上がる方は、コーヒーや紅茶が鉄分の吸収を防いでしまうため、知らぬ間に鉄分不足の状態を作っていることがある。
女性や貧血気味の方に限らず、生活習慣の面から鉄不足を気にされている方も含めてサクランボは、美味しく鉄分補給ができるフルーツのようだ。
彼女に教えてもらった話はもうひとつあった。
それは、サクランボの語源。
語源らしきものがいくつか残されているらしく諸説あるようだったけれど、彼女が気に入っているのは桜を擬人化したという説だった。
サクランボはバラ科サクラ属のなかの実桜(みざくら)と言われる木に実をつけるのだそう。
サクランボはこの実桜(みざくら)の木の子どもなので、子どもを意味する「坊」を付けて「桜坊(さくらのぼう)」と呼ばれていたという。
これがいつの間にか変化し「サクランボウ」と呼ばれるようになったのだとか。
サンクランボを擬人化するなんて日本人らしいじゃないかと思ったことを覚えている。
このようなことを色々と教えていただいたこともあって、この時季は、記憶に引き寄せられるかのようにしてサクランボを手に取る。
程よく冷えたサクランボを口の中に入れて歯を立てると、皮がぷちっと弾けて甘酸っぱさが一瞬にして口の中に広がる。
そして、みずみずしいサクランボの香りが鼻から抜けていく、あの感じ。
今年もやってくるのか、夏が。という気分に包まれるのだ。
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