オフィスビルの入り口で、大きな胡蝶蘭を抱えた女性とすれ違った。
胸当てが付いたシンプルなカフェエプロンを付けた小柄な女性だということは
後ろ姿から分かったけれど、抱えているそれが、あまりにも立派に花開いていたものだから、
女性の表情までは窺い知ることはできなかった。
きっと、新年度の始まりに合わせて届けることになっていたのだろう。
ビルの前に停めてあった配達用の車内には、届けられるのを待っている鉢植え胡蝶蘭の姿があった。
フラワーショップ内でも一際、存在感を解き放つ胡蝶蘭は、
ラン科の植物で東南アジアなどの熱帯地域で多く目にする植物だ。
上品や華やかさと豪華さを兼ね備えており、縁起も良い。
しかも、強い香りが無いため香りによる好き嫌いが出にくく、
他の花の香りと喧嘩してしまう心配もない。
受け取った後のお手入れも簡単で、育てやすいことも手伝ってなのか、
日本では特別な日の贈り物として重宝されている。
4月は、始まりの季節ということもあり“胡蝶蘭”を見かける機会も増えているため、
今回のお話コードは、“胡蝶蘭”でまいります。
日本では贈り物として選ばれることが多い花でもありますので、
この機会に、胡蝶蘭のことを覘いてみてはいかがでしょうか。
胡蝶蘭は縁起物として選ばれることが多い花ですが、
これは、胡蝶蘭の性質や花言葉によるところが大きいように思います。
まず、根を張りながら育つ植物ですので、
地に足が付く、その場所に根付き繁盛する、長く続く、といったことを連想させるようです。
また、胡蝶蘭はカラーバリエーションが豊かな花ですが、
全ての色の胡蝶蘭に共通している花言葉は、「幸せが飛んでくる」というもの。
他にも、古代ギリシャ時代から蘭は子孫繁栄を示すものとして大切にされており、
女性たちは蘭を口にすることもあったのだとか。
このような背景があり、意味が込められ、結婚や出産の前後、お店や事務所などの開店祝いや、
その他の人生の節目に選ばれ続けているお花です。
植物図鑑などを見てみますと学名はファレノプシスと呼ばれているのですが、
これは、ギリシャ語で「蛾のような」という意味をもった言葉です。
胡蝶蘭の花の形から、ファレノプシスと名付けられたことを理解はできるものの、
私たち日本人は、それを言うならば「蛾」ではなく「蝶」ではないか、と思ってしまいます。
しかし、そのように思うのは、日本人ならではの先入観であったりするのです。
私たちは「蛾」に対しては、
「害があるもの」「怖いもの」「きれいではない虫」というようなイメージを抱き、
「蝶」に対しては「美しい虫」というようなイメージを抱きがちです。
しかし、外国では「蝶」も「蛾」も同じように扱うことが多く、
私たちのように細かい選別はしていないように感じます。
これは、日本人が学校で受ける授業の中で、このような共通認識を持つからでしょうね。
以前、外国ではゴキブリをカッコイイ昆虫だと認識しているという話に触れましたが、
何気ない教育が私たちの認識を作っていたりします。
ですから、外国の書物で「たくさんの蛾が舞っている」というように翻訳された文章があり、
前後の内容に対して瞬時に違和感を抱いたのであれば、
作者は本来、蝶が舞っている幻想的なシーンとして描写した可能性も考えられます。
そのような時には、是非、翻訳を知識とイメージで補いつつ、読み直してみてくださいませ。
話が少々飛んでしまいましたが、
胡蝶蘭を覘きますと、このようなことが出てきます。
艶やかな胡蝶蘭を目にされた際には、
今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
関連記事: