赤いクコの実が映える杏仁豆腐が目に入り、思わず手を伸ばした。
杏仁豆腐と一口に言っても、お店や作り手によって、その食感や味の振り幅が大きい。
私は、もっちりとした、スプーンに吸い付いてくるような食感で、
杏仁がこれでもかと濃く感じられる杏仁豆腐が好みである。
しかし、その両方の望みを満たしてくれるものに出会える機会は少ないため、
時々、自宅で杏仁豆腐を作ったりもする。
今では自分レシピというものがあるけれど、自分好みの杏仁豆腐を目指して試行錯誤を重ね、
初めて自分の味覚から合格点が出て分かったことがあった。
それは、自分好みの杏仁豆腐を作る際に使う杏仁霜の量から見る、お商売の難しさだ。
料理の腕と繊細な味覚を生業としている方々は、
葛藤の末の着地点を見つける作業とも闘っているのだなと改めて感じたりもした。
少し話が逸れてしまったけれど、
杏仁豆腐に使われているはずの杏仁霜が使われておらず、
その代わりにアーモンドエッセンスが使われている杏仁豆腐がある。
そして、杏仁豆腐を口にしている人たちの多くは、この違いには気付かずに、どちらも杏仁豆腐だと認識している。
杏仁豆腐の原料として使われている「杏仁(あんにん/きょうにん)」とは、アンズの仁(じん/さね)のこと。
アンズの種から殻を取り除き、中身をすりつぶして粉末状にしたものが、杏仁霜(あんにんそう/きょうにんそう)だ。
呼び方は、「あんにんそう」と「きょうにんそう」の2パターンがあるけれど、
前者はお菓子の材料として扱われる際に、後者は、漢方薬として扱われる際に、そう呼ばれることが多い。
そして、杏仁霜の代替品としてアーモンドエッセンスが使われているものがあるけれど、
このアーモンドは、私たちが良く知るナッツの一種だ。
とは言っても、私たちがよく知るアーモンドはスイートアーモンドに分類されるもので、
ローストして食べる以外にも、お菓子作りに使われるアーモンドパウダーや、
アーモンドミルク、アーモンドプードルと呼ばれるものに加工されている。
一方、杏仁霜の代替品として使われるアーモンドエッセンスは、これとは異なるビターアーモンドに分類されるものが使われている。
杏仁霜の代替にアーモンドパウダーを使うこともできるけれど、
本来の杏仁豆腐の風味に近づけるためにはやはり、ビターアーモンドから作られているアーモンドエッセンスが鍵となる。
どこまで見ても別物であるこの食材が、どうして代替品として使われているのか。
そのカラクリは、杏仁がとれるアンズとアーモンドは同じバラ科サクラ属の植物で、
その実や種の香りは、杏仁の代用にアーモンドが使用できるほど似ているから、ということなのだとか。
皆さんがお好きな杏仁豆腐は、どのようなタイプのものでしょうか。
杏仁豆腐を召し上がる機会がありましたら、ちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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