夢には、脳内の情報を整理している夢や潜在意識を表す夢など、いくつかの種類があるという見方があるけれど、
その日の私の夢は、あまりにも淡くて、はっきりとは覚えていられなかったけれど、
心に、ほんのりと甘くて懐かしい感覚が残っていた。
我が海馬よ、何を脳内整理した!?
ベッドの中でそのようなことを思いながら、ブラインドの端から見える夜が明けた白っぽい空と、
時計の針を確認し、もう一度、ブランケットの下へと潜り込んだ。
しかし、時刻と噛み合っていないように感じられる外の明るさに、
私は、二度寝をすることも、まどろむこともできずに時間を持て余していた。
白っぽい空に朝陽が溶け出しはじめたのだろう。
窓がキラキラと光を反射し始めた。
しばらく、その光を眺めていたのだけれど、ふと小町ちゃんのことを思い出した。
※幸せのレシピ集内では、正式名称・小野小町ちゃんのことを、親しみを込めて小町ちゃんと呼んでいる。
小町ちゃんは、平安時代の前期頃に名を馳せた天才歌人と言われており、
日本限定ではあるのだけれど、世界三大美人の一人としても知られている。
以前、彼女に恋をしてしまった男性の話に触れたことがあるけれど、
それとは別に、彼女が恋心を楽しんでいることを垣間見ることができる和歌がある。
当時は、夢の中に異性が出てくるときというのは、自分の思いが強いから夢に出てくるのではなく、
夢の中に出てきた異性の思いが強すぎるが故に、意中の異性である人の夢の中に現れる。と考えられていた。
しかし、小町ちゃんは、この考え方に対してそんなことって本当にあるのかしら?と半信半疑だったのだ。
だから、想い人が夢の中に出てきても素直に喜ぶことはせず、
「想い人のことを考えながら寝たからかしら?夢の中に彼が出てきてくれたの。
もし、夢の中でこれは夢だと分かっていたら、目覚めずに夢の中にいたのにな。」という和歌を残している。
想い人のことを考えながら寝たからかしら?と冷静さを保ちつつも、
世の中の人々が言っていることを完全に無視することもできず、
私の想い人も私のことを好いてくれているから夢に出てきてくれたのかしら?
もしかしたら、世の中で言われているあの噂は本当なのかしら?と気持ちが揺さぶられたようなのだ。
そしてその後、彼女はもうひとつ和歌を残している。
それを意訳すると、「先日、うたた寝をした時に見た夢の中に私の想い人が出てきたの。
あの日から、以前は信じていなかった
『夢の中に異性が出てくるときというのは、自分の思いが強いから夢に出てくるのではなく、
夢の中に出てきた異性の思いが強すぎるが故に、意中の異性である人の夢の中に現れる。』
という巷の話を信じてしまうようになってしまったわ。」というものだ。
当時の小町ちゃんの想い人がどのような人なのかは知らないのだけれど、
小町ちゃんも和歌に書き留めてしまうくらいの恋を味わっていた、ということなのだろうと勝手に思う。
そして、分かっていないことが多いミステリアスな女性なのだけれど、
和歌の隙間からほんの少しだけ、彼女の一面を見ることができるようにも思う。
朝から平安の世にトリップしてしまったけれど、
ゆっくりと眠ることができる朝に限って目が覚めてしまう不思議。
そろそろ惰眠を貪りたいという願いを叶えたいこの頃である。
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