自宅近くにあるお寺の前を通りかかると、ご住職が庭先の木々を剪定している姿が目に留まり、昨年の出来事を思い出した。
昨年の初秋頃、とあるお寺へ出向く機会があった。
初秋とは言え、まだまだ記憶にも新しいあの暑さの後である。
街中に在ったそのお寺は、周りの熱気と猛暑の余熱が混ざり合ったような場所と化していた。
入り口から本殿まで敷き詰められていた白い砂には太陽が反射しており、目を細めながら本殿へと向かった。
今日は真夏日?と思いながら本殿へ足を踏み入れると、外の空気とは一変して、ひんやりとした心地良い空気が出迎えてくれた。
お寺の空気は違うなと思いかけてすぐに目に入ったのは、数台の業務用エアコンだった。
自然豊かな場所に建つお寺であれば家庭用エアコンで事足り、日によっては自然の風がエアコン代わりなどということもあるのだろうけれど、
アスファルトやビルに取り囲まれたコンクリートジャングル内に建つ大きなお寺ともなれば、業務用エアコンくらい完備しておかなくては、
日々のお勤めや、お参りされる方々へのおもてなしも、ままならないのだろう。
そのようなことを思いながら体から発せられる過剰な熱が引くのを待ってから、所用を済ませた。
その日は、初めて足を踏み入れたお寺だったこともあり、敷地内を散策したのだけれど、お寺の疑問を分かり易く説明した子供向けのチラシを発見した。
学校の文化祭や、学級新聞などで発行されていそうな手書きのそれは、可愛らしいイラストなども描かれており、
お寺のパンフレットや近隣地図が並べられている中でひと際目立っていた。
出口に向かう道すがら、それに目を通していたのだけれど、その中に「お坊さんにも色々な呼び方がある」という話題があった。
私の場合は、昔話のような物語の中の人物を語る際には、その物語の雰囲気によって“和尚さん”という呼び名を使うこともあったけれど、日常では、お坊さん”か“ご住職さん”だったように思う。
しかしこれ、正しい呼び方ではなかったようなのだ。
今回は、そのようなお話を少しと思っております。
ご興味ありましたら、さくっと目を通していってくださいませ。
確かに、お坊さん、和尚さんなど……昔話に登場するお坊さんの呼び方も様々なのですが、皆さんはどのように呼び分けていらっしゃいますか。
仏教と一口に申しましても、様々な宗派に分かれています。
お坊さんの呼び方は、この宗派によって変わるのだそう。
そもそも、お坊さんという呼び方は、仏門に入る際に坊主頭にすることから、
僧侶といえば坊主頭だという流れで、僧侶のことを「お坊さん」と呼んでいたのだそう。
しかし、僧侶だからといって坊主頭にする必要はないという宗派もあるため、
語源を辿ると「お坊さん」という呼び名は、限られた方のみに使うことができるという見方もあるのだそう。
私たちが普段、お坊さんと呼んでいる方は、ある程度の修行を終えて、人々に教えを説くようになった立場にいらっしゃる場合がほとんどかと思うのですが、この立場になった方のことを“和尚”と呼ぶのだそう。
ただ、“和尚”と書いて“おしょう”と呼ぶ宗派もあれば、“かしょう”、“わじょう”と呼ぶ宗派も。
他にも上人(しょうにん)、方丈(ほうじょう)と呼ぶ宗派もあるため、
正しく呼ぼうとすればするほど、何と呼べばいいのだろうかと困ってしまうのが実状かと。
「住職(じゅうしょく)」は、仏教の職位を省略した言葉で、一つの寺院を代表する僧侶のことを表し、ほとんどの宗派で使用できる言葉なので、
何と呼べばいいのだろうかと困ってしまったときには、“ご住職”という言葉を使うと無難なようです。
注意点は、お寺に僧侶が複数人いらっしゃる場合は、代表者を“ご住職”と呼び、
その他の僧侶の方の場合はご本人に何とお呼びすればよいのか直接聞くのがスマートだという点でしょうか。
ご住職をはじめとする僧侶の方々は、細かいことを気にされてはいないと思うのですが、
自分の名前を間違って呼ばれたままの状態を想像してみますと、大なり小なり感じることもあるのではないかと。
明日すぐに使うことができる知識ではありませんけれど、何となく頭の片隅で知っておくことで、いざという時にスマートに振舞える知識のひとつかなと思います。
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