久しぶりにレジ脇の誘惑に負けた。
いつもであれば、レジ脇の小さなお菓子が目に留まっても余裕の笑みでスルーできるのに、その日に限って、
お会計の最中に奥から別の店員が現れ、カラフルなキャンディ、チュッパチャップスが刺さっている台をレジ横に置いたのだ。
まだ誰も手を付けていないことがひと目で分かるくらい真っ新で、ビッシリと詰まっているそれに吸い寄せられた私は、「これも」と言って数本のチュッパチャップスを引き抜いた。
適当に引き抜いたはずなのだけれども、学生の頃に好んで口にしていたフレーバーのパッケージカラーの記憶が薄っすらと残っていたのだろう。
迷うことなく引き抜いたそれらは全て、私好みのものだった。
自宅に帰るや否や、その中の一本を口に入れ、残りはキャンディポットの中へ入れた。
そして、思っていたよりも甘く感じたことを大人になったと捉えるべきか、あの頃の感覚を無くしたと捉えるべきか迷いつつ、
その日は、大人になったのだと捉えることにして、濃い目の紅茶を淹れた。
甘い棒付きキャンディーを舐めては紅茶を飲む。
そんな、地味に忙しないティータイムを過ごしていたのだけれど、
キャンディーを包んでいたセロファンを触りながら、チュッパチャップスのロゴは有名画家・作家だったことを思い出した。
その有名画家・作家というのは、スペイン生まれのサルバドール・ダリである。
作品はというと、溶けたような薄っぺらいような時計が描かれた作品と言えばピンとくる方もいらっしゃるかと。
唇を模ったデザインボトルの香水でご存知の方もいらっしゃるだろうか。
彼は数々の興味深い作品を残しているのだけれど、作品以外にも様々なエピソードが残っている画家であり、作家だ。
彼は、食事をしながらチュッパチャップスのデザインを依頼されたそうなのだけれども、
その食事中に、紙ナプキンにサラサラとチュッパチャップスという商品名を組み込んだロゴデザインを描き提示したという。
このときのデザインが採用され、チュッパチャップスは世界中で愛されるお菓子となったようだ。
もちろん、時代を経る中で、その時代に合ったロゴへのモデルチェンジは行われているけれど、デザインの原型は、今も昔もサルバドール・ダリが描いたものである。
そして、この手のキャンディーはアメリカ生まれという印象があるのだけれど、チュッパチャップスはダリと同じスペイン生まれのキャンディーだという。
美術館へ行かずとも有名画家・作家の作品に触れる機会があります。
チュッパチャップスを召し上がる機会がありましたら、今回のお話をチラリと思い出していただき、
キャンディーを包んでいるセロファン紙のロゴを鑑賞していただけましたら幸いです。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/