その日は、涼やかな装いで家を出たのだけれど、私の予想斜め上をいく蒸し暑さだった。
白線に反射する日差しに目を細めながら横断歩道を渡っていたのだけれど、私のそばには、白線のみを踏みながら渡る子どもたちの姿があった。
蒸し暑さに負けず、額の汗を輝かせながら渡る彼らを横目に捉えつつ、速やかに日陰を選んで歩く術なら年々上達中なのだけれど、いい勝負になるだろうかと思ったりもした。
近道目的で商店街を通ると、今年もミストシャワーが放出されていた。
ミストシャワーが設置してある距離は、十数秒ほどで歩き終えてしまうくらいのものなのだけれど、このミストシャワーの威力たるや想像以上である。
立ち止まりたい気持ちをグッと堪えて商店街を抜けると、夏の風物詩でもある「かき氷あります」の文字が目に飛び込んできた。
昨今は、スイーツ級のかき氷も多々登場しているけれど、そこは商店街そばに位置する昔ながらの飲食店である。
貼り出されていたメニューには、見慣れたイチゴ、メロン、ブル―ハワイ、レモンなどの文字が並んでいた。
そう言えば先日、この手のかき氷の人気フレーバーは、気温によって変化するという記事を目にしたばかりである。
そこには、通常の一番人気はイチゴで、その他のフレーバー人気は僅差だとあった。
しかし、気温が35度を超えた辺りから人気のフレーバーは、レモンや梅といった、酸味やさっぱり感を強く感じるものに変わるという。
私自身の体感や欲する味を想像してみても、この人気の流れは自然だと感じるのだけれど、以前触れたことがあるとおり、この手のシロップは本来、全て同じ味である。
甘さが凝縮された基本シロップにイチゴを想像させる赤い色素と香料を加えるとイチゴシロップに、レモンを想像させる黄色い色素と香料を加えるとレモンシロップになる。
だから、酸味だ、さっぱり感だという味の違いを理由に選び分けているつもりでも、本来は色と香りが異なるだけなのだ。
私たちには確かに味覚があるのだけれど、脳に届く情報は、味覚から得た情報よりも、視覚や嗅覚から得た情報のインパクトの方が大きく、脳がイチゴ気分やレモン気分を先取りしてしまうそうだ。
昨今のスイーツ級のかき氷に使われているシロップは、本物の果物を使って作られたものが多く、「本物の」といった冠が付けられることもありますが、
イチゴの雰囲気やレモンの雰囲気を楽しむ昔ながらのかき氷には、味だけでははかることが出来ない、懐かしさや風物詩的な楽しみなどがあるような気が致します。
今年の夏祭りやビーチなどで、昔ながらのかき氷を楽しむ機会がありました際には、野暮なことは言わずに、
真実を知っている大人だからこその潔さで、思いっきり堪能してみてはいかがでしょうか。
本日も楽しむ気持ちで、口角あげてまいりましょ。
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