持ち込む衣類によってクリーニング店を使い分けているのだけれど、その中の一店舗が近々店仕舞いすることになった。
どこにお願いしても同じだろうと思っていた時期もあったけれど、そうではないと気付かされる出来事を幾度か経験し、引っ越しをする度に、信頼できるクリーニング店を用途別に探すようになった。
今回店仕舞いをするお店とのお付き合いはそれほど長いものではないのだけれど、無くなると聞いて少しだけ気持ちを揺さぶられてしまった。
初めてこのお店を利用したとき、正直なところ、店員の態度に違和感を覚えたことは今でもよく覚えている。
衣類の扱いが雑だとか手際が悪いとかではなかったのだけれど、無表情を極めており、やり取りをする間も全く目が合わなかったのだ。
極度の人見知りなのかもしれないと思ったりもしたのだけれど、いつ行ってもそのような状態で、私の声や表情が行き場を失うことが当たり前になっていた。
ちらりとのぞいたインターネットの口コミにも、私が感じた同様のことが書かれており、何を以って評価された星印なのかは分からないけれど、星の数は極端に少ない状態だった。
それでもお店を変えようと思わなかったのは、その仕上がりの良さが気に入ったからである。
このような状態が数か月ほど続いたある日、「こんにちは」と言ってカウンターの前に立つと、初めて店員と少しだけ目が合った。
とても貴重な瞬間に遭遇した気がして、その日は妙な嬉しさを感じた記憶がある。
それから、少しずつ目が合う機会や時間が増えたある日、いつものようにお礼を言うと「どういたしまして」と素敵な笑顔が返ってきたのだ。
その瞬間、本当はこんなにも優しい表情を持った方なのかと妙に感動し、思わずこちらがぎこちなさを放ってしまった日となった。
それからは、グッと距離が縮まって店内に入るや否や、とびっきりの笑顔で声をかけてくれるようになり、インターネット上の星印が伝える真実は、一瞬を切り取ったものだったのだろうと推測した。
人は、目と目を合わせると幸せを感じるホルモンが脳内に分泌されるというけれど、私たちが思う以上に私たちは幸せホルモンの影響を受けているのかもしれないと思ったりもして。
そしてふと、人と話をするときにどれくらい目を合わせているだろうかと自分を振り返った。
目を合わせすぎないというのも心遣いのひとつではあるけれど、目と目を合わせることで生まれるハッピーもある。
大切な方との会話であっても、慣れてくるとつい、ながら会話になってしまうことがあるけれど、しっかりと目を合わせて、視線を合わせて会話することで互いに届け合えるハッピーがあることを、チラリと頭の片隅に忍ばせておいてみてはいかがでしょうか。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/