サラダに春を添えたくて、冷蔵庫から菜の花を取り出した。
ここで言うところの菜の花は菜種油をとるアブラナのことである。
いつだったか、野菜ソムリエの方に「菜の花」という呼び方は、アブラナ科の植物の総称なので、細かく言えばキャベツやブロッコリーの花も「菜の花」のひとつだと教えていただいたことがある。
そして、私たちが「菜の花」と言って購入する春野菜も、よく見てみると茎が付いているものと、蕾の部分だけをカットして集められたものとある。
私は何となく、その時に手に入るものを購入していたのだけれど、聞くところによれば、後者の方は、あの秀吉さん(豊臣秀吉)が切り花用に栽培していたものを、随分と時が経ってから、蕾の部分を食べる野菜として栽培するようになったものなのだとか。
この日、冷蔵庫から取り出した菜の花は、秀吉さんが発信した菜の花ではなく茎までいただくことができるタイプのものだったけれど、そのような話を思い出したこともあって
秀吉殿、あなたが栽培を促した菜の花ではないけれど、こちらもなかなかキレイな花を咲かせるのではないかと思うのですが……と、脳内で独り言を呟きながら一本だけ、デザート用のショートグラス挿してキッチンに飾った。
お浸しも魅力的な一品だったけれど、そちらは次の機会のお楽しみにとっておき、残りはさっと茹でて、サラダボウルの中で他のお野菜とワシャワシャと混ぜ合わせで春サラダに仕上げた。
菜の花は、葉物野菜の中では栄養豊富な部類に入るけれど、特に多く含まれているのはビタミンCやβカロテンだと言われており、これらの栄養素は、お肌のコンディションを整えるだけでなく、免疫力を高めたり、細胞が錆びないようにも働いてくれている。
ビタミンCの比較対象としてよく目にするのはホウレン草なのだけれど、ビタミンCはホウレン草の3、4倍ほど多く含んでいるというから、同じお浸しを作るにしても、この時季は菜の花を積極的に食べようかしら、と思ってしまう。
それに、菜の花に含まれる大人の苦みは、例のアレ。
冬仕様の体を目覚めさせるスイッチも兼ねていて、一石二鳥である。
今年の冬は、私たちのちょっとした隙を厄介なウイルスが狙っているようなので、こまめに細胞レベルから免疫力を高めておきたいようにも思う。
怯えすぎるのも気疲れしてしまうので、やるべきことや出来ることが分かったら、あとは気持ちを切り替えて春の兆しを楽しむ気持ちで、春の味覚も楽しんでみてはいかがでしょうか。
あれやこれやと思い出しながら幾つかの春野菜を調理していると、キッチンの熱に反応したのか、1本だけ挿しておいた菜の花の蕾が、鮮やかな黄色をのぞかせ始めていた。
菜の花もまた、暖かい春が待ち遠しいようである。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/