出先で素敵な竜胆色(りんどういろ)をした蕎麦猪口を見つけた。
竜胆色(りんどういろ)は、ほんのりと紫色を帯びた柔らかい印象の青色のことで、お盆から秋にかけて目にすることができるリンドウの花の色である。
この色名は日本の伝統色にも使われており、古より人気があった色だという。
今は品種改良によって、ピンク色をしたものやブルーとホワイトのストライプ柄のもの、青は青でも濃淡のバリエーションが豊富に揃えられており、リンドウ=青という認識もそう強くはないのだとか。
それでもやはりリンドウの定番色と言えば、この柔らかい印象を纏った青紫色だと言われている。
目に留まった蕎麦猪口は、そのような、山に咲いていたリンドウを摘んできたような色をしていたものだから、思わず手を伸ばしてしまった。
そう言えば、竜胆色(りんどういろ)は、「かさねいろめ」にも使われている色だ。
この「かさねいろめ」に関しては、私が詳細までお話しできる知識を持ち合わせていないため、ざっくりとした触れ方になってしまうのだけれど、
「かさねいろめ」は、先人たちが身にまとう装束、着物のカラーコーディネート例といったようなものである。
当時の着物は生地に透け感があったそうで、表生地とは異なる色や同色、同系色の生地を裏側に重ねることで生まれる色を使って、のっぺりとした着物姿ではなく、色の奥行や深みを感じられる着物姿を作っていたという。
更に着物の色を、その時々の景色の中にある、植物が持つ色の濃淡ともリンクさせて、季節を表現したり繊細な色合いを楽しんでいたようだ。
現代人が着物を着る機会は随分と減っているけれど、着用する際に衿元に色を重ねて楽しむことがある。
これを着物を使って全身で行っていたと言えばイメージしやすいだろうか。
「かさねいろめ」をどのように捉えるかという点は様々な説があるけれど、
例えば薄緑色をしたガーゼを2枚重ねると、重なった部分の緑色は濃くなり、重なっていない部分は薄緑色のままという状態が出来上がる。
この重なった部分に現れた色のことを「かさねいろめ」と言うことが多いように思う。
そして、竜胆色(りんどういろ)は、秋を表す「かさねいいろめ」であり、先人たちにとって秋のトレンドカラーのひとつだったようだ。
重ね合わせる色合いによって、印象は随分と変わります。
季節の花を選ぶときや、お箸に合う箸置きを選ぶとき、マカロン選びに迷ったとき、その他のちょっとシーンで、十二単の配色を楽しむ気分で「かさねいろめに」使われている色の組み合わせを参考にしてみるのも面白いのではないでしょうか。
「古い」を「新しい」に変えて自由に楽しむキッカケにしていただけましたら幸いです。
関連リンク:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/