窓から流れ込んでくるさらりとした秋風が心地良くて、思わず和室に大の字で転がった。
できるだけ「大」の文字に忠実に大の字で転がる。
たったこれだけのことなのだけれど、やってみてはじめて、大人になるにつれ縁遠いものになっているのだと気付かされる。
ぼんやりと天井を眺めながら、我が家の天井はこんな模様をしていたのかと今更ながら思ったりもして。
猫のように気ままにゴロゴロしていると今度は畳の縁が目に留まった。
いつだったか、あれは本だったのか、畳店が自主制作した小冊子だったのか、畳のことばかりが書かれている少々マニアックな読み物を手に取る機会があり、ティータイムのおともにしたことがある。
その中にこのような話があった。
畳の「ヘリ」には、ご縁の「縁」という文字が使われており、この字は「エン」以外にも「ヘリ」「フチ」と読むこともできるけれど、この読み方は全て畳に通じているのだと。
裁断した状態のままの畳の縁(フチ)を剥き出しにして部屋に敷き詰めたのでは、畳と畳が擦れてしまい傷んでしまうから、畳の縁(ふち)を縁(ヘリ)と呼ばれる布地で覆い囲うことで、畳同士が喧嘩をして傷め合わないよう、畳同士のご縁(エン)を繋いでいるのだそう。
たかが布一枚かもしれないけれど、されど布一枚。
このちょっとした距離感が、畳同士や畳と人の心地良さや美しさを長く保っているのだと妙に納得した記述だった。
現在は技術の進歩もあり、縁(ヘリ)で覆わない琉球畳などが人気だけれど、これはこれで縁(フチ)を剥き出しにしない技法が使われているだけのことであり、畳同士のご縁(エン)を繋いでいることに変わりはないように思う。
そして「縁(ヘリ)」は踏んではいけないというお作法があるけれど、その由来は諸説ある。
巷で多く見聞きするのは、この縁(ヘリ)に使われている布地に家紋を織り込んで身分を表した時代があり、その縁(ヘリ)を踏みつけるなど論外というという説。
お殿様の命を狙う忍者が、畳の縁(ヘリ)同士の僅かな隙間から刀を突き刺してくることがあるため、命を守る目的で縁(ヘリ)は踏まないという説。
あとは、家主とその他の者との違いを表す線引きのような役目のものなので、踏んではいけないという説や、畳の縁(ヘリ)は僅かに盛り上がっているので、躓いて怪我をしてしまわないように踏んではいけないとされている等々だろうか。
様々な視点からの説があるけれど、そうすることで守ることができる様々があったのだろうと思う。
そのようなことを思いながら、お作法そっちのけで大の字になっていたのだけれど、たまには、お作法度外視で心身をゆるゆるに緩めるのもいいものである。
どうやって自分の肩の力を抜いたら良いのか分からないという方、ひとり時間を使ってゴロンと大の字で仰向けになってみてはいかがでしょう。
そして、ゆっくりゆっくり深呼吸。
栄養ドリンクを飲んでもうひと頑張りするのではなく、
しっかりと食べて、しっかりと寝て、体と心の両方を休めることもお忘れなく。
本日も慌てず、焦らず、ひとつずつまいりましょ☆彡
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/