この日私は、様々な意味合いの「箱入り娘」という言葉を多く見聞きした。
その対象も人や動物など様々で、見聞きする度に、日本語は使い手次第で如何様にも変化する面白いものだと思った。
そのようなことを思っているときというのは、無意識に私のアンテナがそちらに向いているのだろう。
普段は素通りしている店先や戸建てのエントランスに置いてあるダイヤモンドリリーに気が付いた。
ダイヤモンドリリーとは、上の画像の花で曼殊沙華(彼岸花とも)の仲間と言われる植物なのだけれど、曼殊沙華と異なるのは、毒を持たない花で扱いやすいというところだろうか。
そして、花言葉のひとつに「箱入り娘」というものがある。
他にも幾つかの花言葉を持っていたはずなのだけれど、私の記憶に残っているのは、これひとつである。
記憶に残っている理由は、ダイヤモンドリリーの別名がネリネであり、このネリネという名の由来がギリシャ神話に度々登場する妖精「ネーレーイス」だからである。
ネーレーイスという名は、特定の妖精の名ではなく海の神様の娘さんたちの総称のようなものなのだけれど、
彼女たちは、神話にありがちなプロフィール例に漏れず美しい容姿をしており、海の神である父と母から溢れんばかりの愛情を受けながら、裕福で不自由のない暮らしを送っている。
しかし、いくら裕福で不自由のない暮らしを送ることが出来ているとはいえ、彼女たちもお年頃。
親の監視下から離れることで得られる自由の中で暮らしてみたい、という思いを持ってはいるものの、それを許してはもらえず、海底にある洞窟の中で親と共に暮らしているのだ。
この様子が、ダイヤモンドリリー(別名ネリネ)の花言葉に反映されており、「箱入り娘」が加えられている。
ダイヤモンドリリー(ネリネ)をよく見てみると、小さなユリの花が集まって一つの大きな花を作っているのだけれど、私には、この小さなユリの花のひとつひとつが、海の神である両親を持つお嬢さんたちにも見える。
そして、立場は違えど、どのような人にも、当事者にしか分からない思いがあるものだと感じながら、想像の中の彼女たちに妙なエールを送ってしまうのである。
ダイヤモンドリリー(別名ネリネ)は、今頃から12月に開花のピークを迎えます。
どこかで目にする機会がありました際には、曼殊沙華の仲間であることや、海の妖精たちネーレーイスのこと、花言葉の中に「箱入り娘」というものがあることなど、何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
日常に在る、小さな扉を押し開けた先の世界を楽しむことができますように☆彡
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