先日、ながら見をしていたテレビから、地球温暖化対策の一つとして昆虫食が注目され始めているというニュースが聞こえてきた。
その土地に古くから伝わる昆虫食の紹介とは異なるこの手のニュースは、近年、至るところで見聞きする機会が増えていることもあり、大した驚きはなかったのだけれど、モニター越しに見る人々の昆虫食への飛びつきっぷりに、人間が一番怖いと思ってしまった。
昆虫を貴重なたんぱく源として食している方々は、世界中に多々居るけれど、彼らはもっと大切に食しているように見えるのだけれど、何となくそれとは異なるように見えたのだ。
昆虫食に対しては肯定も否定も無いけれど、それを温暖化対策の一つだと言うのであれば、その前に出来ることが山ほどありそうだと感じた夜である。
虫と言えば、少し前に太古の昆虫を内包した虫入り琥珀(アンバー)を目にする機会があった。
琥珀(アンバー)は、植物宝石と呼ばれるもので、太古の森で生きていた樹木が分泌した樹液が数千万年もの時間を経て化石化したものである。
濃いハチミツ色をしたそれは、温かみを感じる色と秋の陽射しのような柔らかい艶を放っており、宝石には一切興味はないけれど琥珀(アンバー)だけは別、という方もいらっしゃる。
色が異なるのは、樹液を分泌した植物が異なっていたり、気が遠くなるほどの歳月を経る間に起きた化学変化や環境の変化などによるもののようだけれど、気に入る琥珀(アンバー)に出会えたのなら、鉱物と同じ、一期一会の出会いとなる。
その日私が目にした琥珀(アンバー)は、名前すら分からない小さな昆虫を内包していた。
この昆虫もまた数千万年前に太古の森で生きていたもので、何らかの理由で傷ついた樹木が自分の傷を修復するために分泌した樹液に飲み込まれてしまったのだろう。
琥珀(アンバー)が、天然のタイムカプセルと呼ばれる理由はここにあるように思う。
一般的な宝石であれば、このようなものは大幅に価値が下がってしまうけれど琥珀(アンバー)に限っては価値が上がり、宝飾品のコレクターだけでなく考古学者からも注目されることとなる。
そして、琥珀(アンバー)も様々な伝説や風習に登場する植物宝石なのだけれど、英国では結婚10年目の夫婦が互いに琥珀(アンバー)を贈り合う風習がある。
妻から夫へは琥珀(アンバー)のカフスボタンを、夫から妻へは琥珀(アンバー)のアクセサリーを贈るのだけれど、
これは、琥珀(アンバー)が包み込んだものの姿を半永久的に保存する様子から、互いへの愛と関係がいつまでも続くようにという思いを込めて贈るそうだ。
この日私は、これが太古の森の一員かと、濃いハチミツ色をした琥珀(アンバー)の中に眠る昆虫にロマンを感じはしたのだけれど、
私自身がアクセサリーとして身に着ける機会があるのだとしたら、クリアな琥珀(アンバー)がよいと思ったのはここだけの話である。
私たちが目にできる琥珀(アンバー)は、人が居ない数千万年前の太古の森を封印したものだと言われています。
目にする機会がありました際には、中をのぞき込んで、太古の森を感じてみてはいかがでしょうか。
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