塀の上に、お行儀よく並んでいる雀御一行様の姿があった。
私は、この時季に目にする「ふくら雀(福来雀)」が好きだ。
「ふくら雀(福来雀)」とは、体を覆っている羽根の隅々にまで空気をたっぷりと含ませて、まるでダウンジャケットでも羽織っているのではないだろうかと思わせるくらい体が丸く膨らんでいる雀のこと。
つい人間の勝手な見方をしてしまうのだけれど、人間の方が寒い冬を乗り切るために彼らの知恵を真似ているのだから、ダウンジャケットを羽織っているようだと言うのは少し違っているのだろう。
それでも、着膨れしているように見える丸い姿は、とても可愛らしくて冬の眼福である。
その漢字表記からも察することができるとおり、「ふくら雀(福来雀)」は、幸多き人生となるようにといった願いや祝福の意味が込められた縁起物で、この姿をした雀が羽を広げている様子をデザインに起こしたものは、和小物の柄などにも使われている。
「ふくら雀(福来雀)」を目にしたのだから、年内を無事に締め括ることができるくらいの縁起は担ぐことができたのではないだろうかと思いつつ、雀御一行様の横を通り過ぎた。
ふくら雀を目にする頃は、忘年会続きで大変だ、疲れている、飲み過ぎた、食べ過ぎたという声を機会もグッと増えるけれど、その様子を微笑ましく感じてしまうのは、彼らが、発している言葉とは裏腹に楽しそうな表情をしているからではないかと近頃は思う。
先日は、久しぶりにヘベレケに酔ってしまったと話す知人がいた。
久しぶりに耳にした「ヘベレケ」という言葉の語源は、へーべーのお酌という意味のギリシャ語だという説がある。
へーべーとは、ギリシャ神話に登場する女神の名。
宴の折りに美しいへーべーがお酌をすると、神々もつい飲み過ぎてしまって酷い酔い方をしてしまっていたそうで、このような様子を「へべのお酌(へーべーエリュレーケ/ヘーベーエリュエーケ)」と呼ぶようになり、後にこれを言い易くアレンジされたものが「ヘベレケ」となり、外来語として伝わってきたのだとか。
ただ、ギリシャ神話とヘベレケという言葉が繋がっていることが妙に出来過ぎているような気がして、気にかけていたところ、この説は根拠なき俗説だと仰る方がいることも分かった。
しかし、このような説が広く知られていることに変わりはなく、私が見聞きした説の中でもこの説が回数では抜きん出ている辺り、多くの方にとってイメージし易い映像が、神々が女神にお酌をされて酔い潰れていく様子なのだろうと思う。
最後まで調べ切れていないこともあり、こちらで有力説をご紹介することはできないのですけれど、羽目を外し過ぎて酔っぱらっている方を目にした折には、この俗説をチラリと思い出していただけましたら幸いです。
もちろん俗説であることをお忘れなく。
そして、お酒を召し上がる方は、年末年始のヘベレケ状態にご注意くださいませ。
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