幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

菜の花色をした公園案内人は不死身です。

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中途半端に空いた時間を調整することになったのだけれど、人混みに飛び込む気にはなれず、大きな公園内を散策してから目的地へ向かうことにした。

いつもであれば、犬の散歩やウォーキング、ランニングにボール遊びなど、多くの人で賑わっているのだけれど、連日のニュースの影響なのか、この日の公園内は閑散としていた。

人の気配がないからなのか、外の騒音が遮断させれた敷地内は、風に揺れる木々の葉が擦れ合う音が、普段よりも大きいように感じられた。

時折、映画などのシーンの中で、人々が街から消えた様子が描かれることがあるけれど、それを疑似体験したような感覚である。

その景色を寂しいものとして見ることもできるけれど、自然を独り占めしているような清々しい気持ちもあり、この日は散策を静かに楽しんだ。

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公園内を半周した辺りだっただろうか。

何処からともなく黄色い蝶が現れた。

そして、公園の残り半周を先導してくれるかのように、私の少し先を上下に舞いながら出口方向へと向かい始めた。

名前は分からないけれど、黄色い蝶は不死身だと聞いたことがある。

蝶は代替わりの回数が多く、種類によっては、1年の中で4~5回の代替わりをするものがいる。

そして、蝶の姿になった季節によって春タイプ、夏タイプ、秋タイプと分類されるという。

同じ種族なのに、どのようにしてタイプを見分けるのだろうかと不思議に思ったことがあったけれど、彼らは同じ種族であっても蝶の姿になる季節によって姿、いやデザインと言った方がいいだろうか。

容姿のデザインやフォルムを少しずつ変えているそうなのだ。

だから、私たちがパッと見て何となく分かるアゲハ蝶やモンシロチョウも、実は目にする時期によってその姿が異なっていることになる。

蝶には、このような特徴があるのだけれど、冬の時期だけは成長を止めて冬眠しているため、冬タイプは存在しないのだとか。

しかし、黄色い蝶の中には、蝶の姿のまま冬を越す種族がいるそうで、その蝶は不死身の蝶と呼ばれている。

普段は、暖かい場所で待機しており、春の陽気が感じられる日には、ふわりふわり何処からともなく現れるという。

この日、私の前を行く蝶は、多分これである。

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吉兆モチーフともいわれている蝶だけれど、万葉集の中には登場しない存在でもある。

理由は、魂が姿を変えたものだとか、死者が姿を変えたものだと見られており、この世のものではないという扱いをされていたからである。

私にとって蝶は吉兆モチーフでしかないのだけれど、目の前のものをどう見るか、感じるかで抱く印象も随分と異なるものだと思う。

そのようなことを思いながら歩いていると、公園の出入口が見えてきた。

黄色い不死身の蝶とのプチデートもここまでかと思っていると、公園内へ入ってきたご婦人と蝶を挟むようにして目が合い、お互いにニッコリと微笑み合ってすれ違った。

すると黄色い蝶は器用に方向転換をして、今度はご婦人の前をふわりふわりと。

とても素敵な菜の花色をした公園案内人(蝶)に出会った日である。

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