自宅ポストの中身をまとめて掴んだ際に、何やらムニュッとした感覚を覚えた。
不思議に思って郵便物を上から捲るようにして確認すると、近所にある洋食屋がテイクアウトを始めたというチラシに、デコレーション袋に入れられた黄色い風船が1つ添えられていた。
ムニュッとした感覚の正体はこれである。
紙切れ1枚よりも読んでもらえる確率があがると考えたのか、小さなお子さんが暇を持て余しているようであればこれで遊んでくださいということなのか、真意は分からないけれど思いが詰められたチラシであることが伝わった。
風船かぁ……。
風船で遊ぶには大人になりすぎてしまっている私は、そのままテーブルに置いているのだけれど、黄色い風船が空高く昇っていく様子を想像すると少しだけ気持ちが晴れやかになるような気がした。
たくさんの風船を空へ解き放つバルーンリリースと呼ばれるイベントがある。
私は未だ一度も、そのような体験をしたことがなく、目にするのは映像か画像かである。
時折、バルーンリリースに使われた風船だという確証が無いにも関わらず、風に乗って飛ばされてきた風船を目にしてワクワクすることがあるのだけれど、それはきっと、子どもの頃に自宅の庭に辿り着いた風船の記憶が残っているからだろう。
風船から伸びた紐の先には花の種が付いており、「良かったら育ててください」といった類のメッセージが添えられていたように思う。
どこから飛んできたのか、誰が飛ばしたのかも分からなかったけれど、子どもながらにそれまで感じたことのないワクワクを覚えたように思う。
と同時に、誰にも拾われなかった風船は、その後どうなるのだろうかとも。
大人になりバルーンリリースを行うためには、いくつかの守るべきルールがあることを知った。
その主なルールとは、バルーンリリースに使う風船の素材は、自然に分解されて土に還ることができるラテックスゴムを使うこと。
風船を膨らませる際には爆発したり燃えたりする危険がないヘリウムガスを使い、風船の口元を止める際には風船そのものを引っ張り伸ばして縛るようにして止めることといったものである。
プラスティック製品を使って風船の口元を止めるなどしてしまえば、地球上があっというまにプラスティックゴミで覆われてしまうため、安心安全と環境保護の双方の視点から、このようなルールが設けられているという。
私が子どもの頃に手にした花の種は丈夫な包装が施されていたように思うので、バルーンリリースの規模が大きくなったり、開催頻度が上がる度に、こうしたルールが設けられるようになったのではないかと勝手に推測している。
そのようなことを思い出しながらもう一度、テーブルの上に置いたままの黄色い風船を手に取った。
せっかくだから膨らませてみるかと、(念のため、消毒を済ませた後に)膨らませてみると想像以上に辛くて驚いた。
肺活量を鍛えておくと、呼吸器疾患の予防になったり、基礎代謝が上がり余計なカロリーをため込みにくい体質に改善したり、体力がついて疲れにくくなるなどのメリットがあると言われている。
運動不足になりがちなこの時期は、こういったもので遊びながら体の機能を整えるのもアリではないかと思った。
私の願いは「基礎代謝よ、上がれ!」なのだけれど、その他のメリットがおまけのようについてくることは大歓迎である。
そのようなことを思ったものだから、洋食屋店主からのお心配りである黄色い風船をふーっと膨らませるこの頃である。
そして、風船のお礼も兼ねて近々、この洋食屋のメニューをテイクアウトしてみようかとお知らせにあったメニューを吟味する夜である。
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